宮沢りえ × 佐藤二朗 中村佳穂の楽曲から着想を得た舞台「そのいのち」で表現する“生命への讃歌”
負を力にするのが生きるということ
――そうだったんですね。今回、宮沢さんに加えて、佳山明さん、上甲にかさんという、ハンディキャップを持った2人の俳優がダブルキャストで参加することも話題を呼んでいます。
佐藤:僕にとって、負を力にするのが生きるということなんです。負を生命を燃やす燃料に変えることを55歳の僕は祈るような気持ちで信じていて、それがこの物語を書いた理由でもあるんです。鈴木裕美っていう仲が良い演出家がいるんですけど、一緒に飲んでいてこの芝居の話をしたことがあったんです。その時、喫煙場所でタバコを吸ってたら、裕美さんに「さっき言ってた芝居。すごい意義があるからやったほうがいい」って言われたんですよ。それが社会的な意義なのか、演劇的な意義なのかは言いませんでしたけどね。
それで後日、りえちゃんに役を受けてもらえたことを伝えたら、「よかったじゃん」って言ってくれたんです。他にも「意義がある」と言ってくれる人が多くて。それで実際に2人(佳山さん、上甲さん)に会って話をした時に、彼女たちから「どうしても演技がしたい!」という熱を感じたんです。それに触れて、「負が力になる」姿をできればこの目で見てみたいと強く思ったんです。
宮沢:私は去年、「月」という実際にあった事件をもとにした映画に出演したんです。ハンディキャップを持っている方が預けられている施設を舞台にした作品だったので、撮影に入る前に施設を利用されている家族の方に話を聞いたり、自分で実際に施設に伺ったりしました。私が伺った施設は朝来て夜に家に帰る施設でしたが、映画で描かれる施設は森の中にあって、24時間、外の世界から閉ざされているんです。そういうところに隔離されてしまった人もいれば、自分の可能性を開こうと舞台に立つ人もいる。今回、その違いについて考えましたね。
――それは大きな問題ですね。
宮沢:「月」に出演したことでいろんなことを学びました。世間ではハンディキャップがある/ないで分けられることが多いですけど、ハンディキャップがある方の中には当然のようにさまざまな個性があるし、さまざまな感情が渦巻いている。それを知れたことが自分にとっては大きかった。だから今回、お2人が舞台で役を演じきるのを一緒に体験したいと思っています。