震災以降、移住先として急浮上した岡山県とは?(下)
移住先として人気の高まる岡山県。実際の移住希望者や先輩移住者はどのような人々なのだろうか。前出、岡山市役所 移住・定住支援室の佐川さんによると、説明会に来る移住希望者の多くは、もともと岡山にゆかりのある人たちではなく、(岡山が)全く未知の土地で、訪れたことさえないというIターン組が大多数を占めるそうだ。特に働き盛りの30・40代からは、震災後に価値観がガラリと変わり、 “命と家族を守る”ことを最優先に考えて移住を決意したという声が多いという。それまでの勤務先で働きながら転職活動を進める父親を首都圏に残して、健康を心配する母親と子どもが先に移り住むケースもあるといい、子育て世代が抱える環境面および健康面での悩みの深刻さがうかがえる。 震災以降、移住先として急浮上した岡山県とは?(上)
実際に移住してきたという方のケースを見てみよう。子育て真っ最中の主婦、Y・Nさんが埼玉県から移住したのが2012年の3月のこと。震災直後は子どもの健康が心配で、買い物に出かけても何も買えずに帰ってくることがよくあったという。産地表示を見ると東日本産のものがほとんどで、手が出なかったのだそうだ。そんな彼女が移住に踏み切るまでにはそれほど時間はかからなかった。友人が複数おり、何度か訪れたことがあった岡山を選んだのは、ある意味自然な流れだったのかも知れない。支援団体の協力もあって早々に住まいを見つけることができ、現在では家族ともども岡山での暮らしにもなじんでいる。移住者の友人同士が集まると、「スーパーで地元産の野菜などを気兼ねなく買えるのが何よりも嬉しい」といった話題で盛り上がるそうだ。 Y・Nさんが住居探しの際に協力を仰いだというのは、民間のボランティアにより運営されている任意団体である。東京・大阪での説明会にも幹部メンバーが駆けつけ、移住希望者の生活面での相談を受け付けている。『おいでんせぇ岡山』や『子ども未来・愛ネットワーク』、『岡山盛り上げよう会』など、複数の団体が相互連携しているほか、県や市などの行政とも協議会を通じて情報共有するなど、バックアップ体制がしっかりしているのが特徴だ。