「プーチンをクマの襲撃から守った」プーチン“終身大統領”が最も信頼する“後継者”の正体とは
プーチンが最も信頼する「有力後継候補」
一方で、戦時下のロシアでは、長期政権に伴うひずみや矛盾もみられる。ウクライナ軍は24年8月、隣接するロシアのクルスク州に侵攻し、1000平方キロ以上を占領した。ロシア領が外国軍隊に制圧されるのは、第二次世界大戦の独ソ戦以来初めてで、隙を突かれた形だ。 24年6月、民間軍事会社・ワグネルが首都進撃を企てた「プリゴジンの乱」や、死者150人以上を出した24年3月のモスクワ郊外のコンサートホール襲撃テロでも、治安機関の動きが鈍く、危機管理に問題を残した。ロシア軍内部では、ショイグ前国防相系列の高官約20人が汚職疑惑で逮捕されるなど粛清が続いており、不協和音がみられる。 こうした中で、プーチンが最も信頼するのは、忠誠心の強い旧ボディーガード人脈だ。特に、シベリアで休暇中のプーチンを熊の襲撃から守ったエピソードを持つデューミン大統領補佐官(軍需産業担当)は、クルスク州解放作戦の調整責任者に抜擢されるなど台頭が著しい。ロシアの専門家の間では、有力後継候補と目されている。 懐刀のデューミンはまた、内外政策の基本路線を策定する国家評議会書記にも任命された。プーチンの体調などに異変があれば、デューミンが後継大統領となり、プーチンは国家評議会の議長に回り、「院政」を敷く可能性もあるといわれる。 プーチン後も「プーチン路線」を恒久化させることが、政権の思惑のようだ。 ◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2025年の論点100 』に掲載されています。
名越 健郎/ノンフィクション出版