エンジン型式がモデル名:ジャガーXK150 トランペットな響き:アストン マーティンDB5 直6の英国車たち(1)
ブリティッシュ・スポーツといえば直6エンジン
アメリカ車と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはV型8気筒エンジンだと思う。イタリアのスーパーカーには、V型12気筒を期待したくなる。日本車の黄金期なら、4気筒の2.0Lターボだろう。特定のクルマには、特定のエンジンが不可欠だ。 【写真】直6の英国車たち アストンDB5にジャガーXK150、トライアンフTR5ほか その関連モデルも (207枚) では、英国製スポーツカーなら? 直列6気筒エンジンだ。技術的な優位性と、当時の協力関係が相まって、定番の選択肢になってきた。 また1947年以前の英国には、「馬力課税」と呼ばれる自動車税制が存在した。シリンダーの直径、ボアによって税額が変わり、必要な動力性能を得るためロングストローク化が進んだ。結果としてトルクが太いものの、高域まで回る特性は得にくかった。 当時の低質なガソリンも、回転上昇の妨げに。中域での扱いやすさを求めると、可能な限りバランスを整え、滑らかに回す必要があった。直6が理想的な設計といえた。 つまりブリティッシュ・スポーツは、低中域の粘り強さを活かし、郊外の公道を飛ばす走り方が向いている。アウトバーンやアウトストラーダを、高域を使って飛ばすスタイルは似合わない。 馬力課税は、戦後間もなく廃止された。しかし技術者の考えは、すぐには変わらなかった。今回振り返る珠玉の6台には、英国が誇る直6エンジンが載っている。これを軸に、魅力を再確認してみたい。
ジャガーXK150:新技術の自社初ユニット
優れた直6エンジンを英国製の中で選ぶなら、ジャガーXKシリーズと呼ばれる名機は外せない。設計は古く、第二次大戦中に技術者のウィリアム・ヘインズ氏によって開発された。空襲から逃れながら。 一般に公開されたのは、1948年の英国モーターショー。ジャガー初となる自社製エンジンとして、XK120の動力源に設定された。そして1992年まで、改良が加えられながら生産が続いた。 大きな特徴が、半球形の燃焼室が与えられた、アルミニウム製のツインカムヘッドを採用したこと。これは、1940年代のレーシングカーの例に習ったものといえた。 エンジンの型式名をモデル名に冠した、XK120の反響は熱狂的なもので、同社は量産化を決定。英国では、同等の性能を持つモデルの半額程度で発売され、たちまち多くの支持を集めた。 当初は、3442ccの排気量から162psの最高出力を発揮。1.0L当たり、47psという効率だった。今回、英国編集部が用意したのは1959年式のXK150。排気量は3.8Lへ拡大され、最高出力は223psへ上昇している。 冒頭でご説明したとおり、英国製ユニットの真骨頂といえるのが太いトルク。2024年では目立った数字に思えないが、3000rpmで達する33.1kg-mが、低域から力強い走りを叶えている。 回転を引っ張ることなく、XK150は爽快。カーブからの鋭い脱出を、余裕でこなす。