エンジン型式がモデル名:ジャガーXK150 トランペットな響き:アストン マーティンDB5 直6の英国車たち(1)
設計が80年前だとは感じさせない洗練性
粘り強い特性は、キビキビとした切り替えを好まない、モス社製のトランスミッションとも相性が良い。変速時には、ニュートラルで一度クラッチペダルを放すダブルクラッチか、ニュートラルでの一呼吸が必要になる。 ドアを開き、横向きでシートへ座る。久しぶりに運転するXK150は、操作系が重い。ステアリングホイールは大径だが、動かすには力がいる。トランスミッショントンネルと平行になるくらい、シフトレバーを前方へ倒し、1速へ入れる。 徐行を始めれば、XK150はグッと軽く感じられる。カーブへの侵入は、驚くほど機敏。右足を煽ると、思い通りにボディが前方へ押し出される。 座面位置が高く、シャシーの上に座っている感じは否めない。旋回時はボディロールが小さくないが、ある程度のポイントで安定しラインを辿れる。積極的に走らせるのが気持ちイイ。 運転体験を素晴らしいものにするのが、このために設計された直6エンジンのサウンド。低域の唸りを交えながら、咆哮を放つ。レスポンスも素晴らしい。基本設計が80年も前だとは感じさせない、洗練性がある。
直6エンジンの開発を牽引したタデク・マレック
他方、英国で直6エンジンの開発を牽引したもう1人の技術者が、タデク・マレック氏。ただし開発当初の仕様は、WO.ベントレー氏が設計した、ラゴンダ時代のユニットと大きな違いはなかった。 ツイン・オーバーヘッドカムのヘッドに、スチール製のブロックを採用。排気量は3.0Lほどだった。だが彼は、低域での扱いやすさを求め排気量を拡大。最終的には3670ccに設定された。 また、エンジンブロックの鋳造を請け負っていた業者は、技術的な難しさからスチール製ではなくアルミ製への変更を申し出た。期せずして、新ユニットは軽量なブロックを得ることになった。 1958年に、新しい直6エンジンを積んだアストン マーティンDB4が登場。DB5、DB6と進化し、英国を代表するモデルの1台になったことは、ご存知の通りだ。 それ以前は、フランク・フィーリー氏がアストン マーティンのスタイリングを担当していた。しかし更なる美しさを求めて、イタリアのカロッツエリア、トゥーリング社へ依頼。細いフレームにアルミ製パネルを張る、スーパーレッジェーラ構造で成形された。 このボディは剛性を担うのには強度が足りず、アストン マーティンはチューブラー構造を前後とルーフ部分に備える、モノコックシャシーを開発。当初の予定以上の、現代的なモデルへ仕上がった。