「マジか…」記者が震えた 2024年最も印象に残ったクルマの記事 3選
3:朽ちた廃車に感じる「ロマン」 ジャンクヤード探訪記シリーズ
【「風の丘」で眠る何千台ものクルマたち 家族経営の巨大ジャンクヤードで見つけた珍しい宝物 40選 前編】(11月2日掲載) これはニュースではなく、ジャンクヤードに置かれた廃車を巡る特集記事だ。 今年は、自称 "ジャンクヤード・ジャンキー" のウィル・シャイアーズ記者が書かれた、米国の巨大ジャンクヤードを探検する特集記事を何本も翻訳させていただいた。広大な敷地(たいていは雑草が生い茂った原野のような土地)に何千台と並ぶ廃車を1台1台カメラに収め、車種と年式を識別し、簡単な歴史やエピソードを交えて紹介するという内容だ。 ご本人に直接お話を伺ったわけではないが、シャイアーズ記者の書かれる記事はどれも、クルマに対する慈しみとユーモアにあふれている。腐りかけたクルマを単なるドンガラとして扱うのではなく、一種のストーリーテラーのように見て、さまざまな情報を汲み取ろうとする。 錆びついたフロアパン、色褪せたボディ、ぽっかりと穴の空いたエンジンルーム……。もう二度と道路を走ることのない廃車がずらりと並んだジャンクヤードは、筆舌に尽くしがたい感情を芽生えさせる。僕はすっかり、シャイアーズ氏の記事とジャンクヤードの虜になってしまった。 ジャンクヤードはクルマが最後に行き着く場所だ。数十年かけて部品を少しずつ剥ぎ取られ、骨格をむき出しにされ、最終的には破砕機にかけられて金属片になり、リサイクルで他の製品(キッチン用品とか)に生まれ変わり、またわたし達のところへやってくる。その一連の奇妙な面白さは、おそらく、廃墟が好きな "廃墟マニア" の方々にも共感していただける部分があると思う。 「自分のクルマもいつか、そのような場所にたどり着くかもしれない。そしてその樹脂部品や金属は、巡り巡ってスプーンや文房具になって手元に戻って来るかもしれない」――そんな想像をしてみると、今身の回りにある物への愛着が、より一層深まるような気がする。 ■最後にご挨拶だけ どのような人が記事を読んでくださるのか、僕からは皆さんの顔が見えません(僕の顔は皆さんに見えていると思いますが)。僕はかれこれ4年間、クルマに関するさまざまなタイプの翻訳記事を書くという仕事をしてきましたが、読者の方とは一度もお会いしたことがなく、名前はおろかおおまかな年齢性別すらわかりません。 ただ、AUTOCARの読者には自動車愛好家の方が多いはずなので、皆さんは遠からず僕と同じような「クルマ好き」なのだろうと勝手に想像しながら、自宅でPCのキーボードを叩いています。お粗末ではありますが、こういう記事を読んでくださる方がいるおかげで、僕はこの仕事を続けることができています。 いつもありがとうございます。どうぞ素敵な新年をお迎えください。
執筆 AUTOCAR JAPAN編集部