SNSで“部族化”した?現代アメリカ 中間選挙前にヘイトクライム続発
90年代以降は個人による憎悪が事件の引き金に
一方、1990年代に入ると、連邦政府や人工中絶を行うクリニックが爆弾テロや銃撃の対象となったが、実行犯のほぼ全ては「ローンウルフ」と呼ばれる、特定の組織に属さない個人。政治・宗教的に異なる価値観を持つ個人や団体に対して抱いた憎悪が引き金となって事件を起こすケースが多かった。 この数週間でアメリカ国内を震撼させた事件は、個人による犯行ばかりだ。米捜査当局は先月26日、フロリダ州在住の56歳の男を違法な爆発物の郵送などの容疑で逮捕した。熱烈なトランプ支持者として知られた容疑者の男性は、クリントン夫妻やオバマ夫妻、俳優のロバート・デ・ニーロ氏らをはじめとする、トランプ大統領の政策を疑問視する著名人に自作のパイプ爆弾を送りつけていた。その数日前の先月24日には、ケンタッキー州のスーパーマーケットで、2人の黒人男性が突然射殺される事件が発生した。容疑者として逮捕された51歳の白人の男は、スーパーで面識のない黒人を射殺する直前に、近くにある黒人信者が集まる教会を襲撃しようとしたものの、断念していたのだという。 27日には東部ペンシルバニア州ピッツバーグにあるシナゴーグで、ユダヤ人を狙った無差別乱射が発生。銃撃が発生した日はユダヤ教の安息日で、シナゴーグには多くの人が集まっていた。97歳の女性を含む11人が射殺された。容疑者は事件前、ソーシャルメディアでユダヤ人に対する攻撃の正当化について言及していた。 これらの事件は個人によって引き起こされたものだが、ソーシャルメディアでの煽りと群集心理が絡まって、21世紀のアメリカとは考えられないような、大規模なネオナチ集会が公然と行われることも珍しくなくなった。昨年8月にはバージニア州シャーロッツビルに全国の白人至上主義者が集結。人種差別に反対するデモ隊とも衝突し、1人が死亡している。夜にはバージニア大学のキャンパスで、松明を手にした白人至上主義者250人が行進を行ったが、「松明の行進」はナチ党を支持するドイツ人学生や若者が1933年に行ったことで知られている。