CM出演者が個性的だった1990年代のクルマ3選
(3) ダイハツ「ロッキー」(初代)×相原勇
初代ダイハツ・ロッキーのテレビコマーシャルはまことに元気のいいものだ。ほぼ全篇にわたって「ロッキー」と叫んでいるバージョンもあった。主演は、タレントの相原勇。 相原勇は、当時テレビの深夜帯にもかかわらずある種の社会現象まで引き起こした「三宅裕司のいかすバンド天国」(TBS系)の司会アシスタントで人気を呼んでいた。番組は89年2月に始まり90年12月に終了するので、90年6月にロッキーが登場した時点では、おもいっきり旬のひと。 “イカ天”は、ご存知のかたが多いと思うけれど、素人バンドの勝ち抜き合戦。5週勝ち抜くとメジャーデビューが約束される構成だった。この番組出身の「人間椅子」など、今も世界的に高い評価を受けながら活躍中のバンドがあるのも、文化的貢献度が高かったといえるのではないだろうか。 表現の幅が広く、ビジュアルでも凝ったバンドが多く登場したことでバンドブームが起こり、若者の多くが楽器を手にするきっかけを作った。この頃人気のあった日本のフェルナンデスが、さきごろ倒産したとき、私は一瞬、“イカ天”のことを思い出した。 “イカ天”では、相原勇の「次のバンドはこのバンドだい!」という紹介がキュートで、これで好感度が急上昇。ロッキーのコマーシャルでも、市街地を走り、そのあとオフロードを走るシーンに合わせて「街乗りだ、山乗りだい!」と、相原節が聞けた。 初代ロッキーは、しかし、広告から受けるイメージとは異なり、本格的な成り立ちのクロスカントリー型4WDだった。セパレートフレームのシャシーに、リヤサスペンションはリジッド。1.6リッターエンジンに組み合わされる駆動系は、トランスファー付きパートタイム4WDと、もうひとつ、ロック機構をもつセンターデフ式フルタイム4WDとが用意されていた。 ホイールベースは2175mmとかなりショート。全長3800mmていどのボディには2ドアしか用意されていなかった。リヤの合成樹脂製のトップを取り外してセミオープンに出来る(それによって車内騒音が低減できる)など、ジープみたいな構成だ。 実際、市街地で使うにはけっこうハードな印象で、限られたユーザーを対象にしている感が強かった(当時はメルセデス・ベンツのGクラスもそんなクルマだった)。日本では6年間、海外の一部の市場では12年間生産継続されたのだから、オフロードの走破性を評価するひとは一定数いたことになる。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)