CM出演者が個性的だった1990年代のクルマ3選
(2) ホンダ「オデッセイ」(初代)×アダムス・ファミリー
テレビコマーシャルとして、キャラクターに強いひねりが効いていたのが、1994年に発表されたホンダの初代オデッセイのもの。コピーは「幸せづくり研究所」で、登場するキャラクターはいわゆるアダムス・ファミリーだった。 米国のカートゥニストである、チャス・アダムズ(12~88年)が創作した不気味な一家が、いわゆるアダムス・ファミリー。ごく最近では、ティム・バートン監督、ジェナ・オルテガ主演のNetflix ドラマ「ウェンズデー」(2022年)の元ネタでもある。 カートゥーン(ひとこまマンガ)としての初出は37年の「ザ・ニューヨーカー」誌。故・長谷川町子はこれにインスパイヤされて「いじわるばあさん」(1966年)を作ったのではないかというのが、私見である。 ただし、ドラキュラ、マミー、人造人間といったモンスターで構成されたアダムス・ファミリーのやることは、はるかに悪辣。人命に関わるいたずらが大好きで、よくこの内容で連載が許可され、さらに多くのファンを生み出したものだ、と、作品集を何冊も持っている私ですら、あきれてきた。 初代オデッセイのコマーシャルを制作したスタッフが、どうやってホンダの宣伝担当を説得したのかわからないし、当時、このコマーシャルを見たひとの何人が「あ、アダムス・ファミリーだ!」と、ピンときたか知らないが、セットにもカメラワークにも外国人俳優の役作りにもしっかり手をかけた出来映えだ。 重要なのはファミリーが最初で、次はそのファミリーにインパクトがあること。トヨタならサザエさん一家を起用するかもしれないが、適度にとんがっていたホンダだけに、不気味さを逆手にとったのだろう。大変重要なモデルであるオデッセイでこれをやったのは英断だ! と、当時テレビの前の私は思った。 初代オデッセイは乗用車とミニバンの中間的なスタイリングが印象的だった。「アコード」の基本プラットフォームを使いながら、2830mmものロングホイールベースを実現。全長も4750mmと思いきった長さ。ただし全高は1650mm前後に抑えられていた。 長いルーフをもつ車体には3列シートが収まっていた。これが先述した7人で構成されるファミリーをキャラクターに使う理由。2列目シートを折りたたむと広い積載空間が使えるのは、大きなカラダのフランケンシュタインの怪物役の役者で表現していた。 スライドドアを商業車みたいだと敬遠する傾向が強い米国市場を考えて、後席用ドアも前ヒンジの乗用車的なもの。これもよかった。 ただし、3列目シートの空間は狭くて、大人には不向き。荷物置き場が一番向いていた。ロングホイールベースの車体を考えると、残念だと思ったものだ。パッケージングって難しい。