宮崎美子さんに聞く「日本の食と農」 命育てる最先端の仕事
農家は、毎日の積み重ねを大切にしています。命を育て、食べ物を育てることをなりわいにしている農家は、毎日の“当たり前”を大事にすることが根付いていると思いました。 例えば廃棄野菜。廃棄やくず野菜なんて本当は言いたくない。ちょっと形が悪い、規格に合わない野菜を農家は日々の食卓に生かしています。当たり前のことをずっと普通に積み重ねている、それはとても尊いです。 NHK連続テレビ小説「おむすび」で農家役で出演しています。食べ物を大事にする気持ちを持って、農家役を演じることができたかな。 小さな畑で野菜を作っています。野菜を作ることは私の人生を豊かにしてくれています。大変だけど、無になれる時間。野菜を育てていると、気候や天候も本当に心から感じられます。 そして、年を重ねれば重ねるほど、農業や食の大切さが身に染みます。おいしいものは世の中にあふれている。でも、当たり前の日々、繰り返しをちゃんと楽しめる食生活が一番豊かだと思います。 今、野菜が高いといわれますよね。でもそれだけ手間がかかっているから、値段だけに目を向けてほしくないですね。 学校や家のプランターなど、誰もが少しでも野菜を育てることに挑戦したらどうだろう。値段が高いと言うだけじゃなく、なぜこんな値段になっているかを考えなきゃいけないと強く思います。 「おむすび」の舞台の一つである福岡・糸島には親子代々の農家もいれば、自分で始めた農家もいます。この動きが面白い。若い人たちが新たに農業に参入する地域はとても活力を感じます。 農業は最先端の産業。いつの時代も必ず必要です。農業は誰にとっても大事で、仕事のやりがいは一番得られる仕事じゃないかな。いろいろな仕事があるけれど直接の手応えを得るのは難しいです。でも農業は誰にとっても大事で、ないとみんなが困る。それはある意味、うらやましくもあります。そんな農家役を演じられたことは、私の中の財産です。 おむすびは遠足だったり、災害時の炊き出しだったり、場面場面で、いろいろな思いを込められます。どうか頑張ってください、お疲れさま──。食には人々の特別な思いが込められています。 そして、今日食べたものが、体の一部になっていく。食は本当に大事です。 (聞き手・尾原浩子)
日本農業新聞