小泉純一郎元首相は「殺されてもいい」覚悟で“刺客”を放った…裏金議員「非公認」も「当選すれば追加公認」で石破首相、進次郎氏に問われる本気度
小泉氏の「殺されてもいい」発言
自民党に「今こそ社会主義革命を起こすべきだ」、「天皇制は廃止すべきだ」といった主張を公約に掲げる議員は皆無だろう。一方で、夫婦別姓や死刑制度の存廃、同性婚といった論点では賛成派も反対派も党内に存在している。 「本来なら、自民党内に郵政民営化に賛成する議員も反対する議員も両方いて当然なのです。ところが小泉さんは、それは認めないと明言した。おまけに公認を与えないだけでなく、刺客を放って落選させるというのですから滅茶苦茶です。ただし、一方で、これほど首相の考えを明確に国民へアピールする方法は他にありません。国民は『小泉さんは本気だ』と受け止め、一種の熱狂が巻き起こりました。その結果、総選挙で自民党は大勝を収めるのです」(同・伊藤氏) 伊藤氏の印象に残っているのは「殺されてもいい」という小泉氏の言葉だ。参院で法案が否決される公算が高まっていたため、8月6日に前首相の森喜朗氏が首相公邸を訪問し、小泉氏に解散の回避を依頼した。 森氏は「寿司でも取ってくれるだろう」と思っていたというが、首相だった小泉氏が差し出したのは缶ビール10本。ツマミは干からびたチーズ(実際はミモレットチーズ)とサーモンしかなかったという。
問われる石破首相の本気度
それでも約1時間半、森氏は解散を思いとどまるよう説得した。だが小泉氏は「俺の信念だ。殺されてもいいんだ」と断言したこともあり、森氏は全てを諦めたという。 「裏金事件を巡って、石破さんが小泉さんのように断固たる姿勢を示すなら、やはり『不記載が発覚した議員は一人残らず非公認とする』とすべきでした。ひょっとすると小泉さんなら、そうしたかもしれません。全員を非公認とすれば、国民は石破さんの強い意思を感じ取った可能性はあります。しかし、実際は付け焼き刃で中途半端な処分に終わりました。石破さんは『5人を切ることで10人を助ける』ことを目指したわけですが、12人を非公認としたことで、果たして自民党は過半数割れを防げるのでしょうか。それは未知数だと言わざるを得ません」(同・伊藤氏) 伊藤氏が引っかかりを覚えたのは、既に不出馬を決めていた東京6区の越智隆雄氏も自民党は非公認と発表したことだ。1人でも非公認の数を増やしたいという思惑が透けて見える。 「さらに国民の物議を醸すかもしれないのが、石破さんが早々に『非公認議員も当選すれば追加公認する』と言明したことです。『選挙に当選すれば禊ぎは済んだことになる』という永田町の常識は、一般社会では非常識です。郵政総選挙で自民党が大勝を収めても、造反議員の復党は党内で時間をかけて議論しました。最終的には大半の議員が復党し、それに世論が反発したのは事実だとはいえ、当初は『当選すれば復党OK』という方針ではなかったことは確認しておくべきでしょう。総選挙後、石破首相が当選した非公認議員の追加公認を簡単に行えば、裏金事件に対する首相の本気度を疑われても仕方ありません。新たな火種となる可能性があります」(同・伊藤氏) デイリー新潮編集部
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