小泉純一郎元首相は「殺されてもいい」覚悟で“刺客”を放った…裏金議員「非公認」も「当選すれば追加公認」で石破首相、進次郎氏に問われる本気度
党にとって議員は“頭数”
先に触れた通り、公認候補の中で最も裏金の額が多かったのは福岡11区の武田良太氏だ。この武田氏も“反論”を行い、その内容を地元メディアが伝えた。 地元テレビ局のRKB毎日放送は10月10日、「“裏金”議員の公認 武田良太元総務大臣『何をもって裏金というのか 我々は決して裏金はもらっていません』」との記事を配信した。 タイトルからも明らかだが、武田氏は「本当に裏金をもらった人には厳しい判断が下るんじゃないかと思うけど我々は決して裏金はもらっていません」と説明した。 武田氏の見解を福岡11区の有権者がどう受け止めるのか、その結果は10月27日に明らかとなる。 政治アナリストの伊藤惇夫氏は1973年から自民党の職員として勤務し、1989年からは党政治改革事務局主査補として政治改革大綱の取りまとめに奔走。さらに民主党の事務局長として党運営に尽力した経験を持つ。 伊藤氏は「政党の事務方に身を置いたことのある者として、党は議員を“頭数”としか見ないということは指摘する必要があると思います」と言う。 「政党にとって最重要の目的は、所属する国会議員の数を最大化して政権を手に入れることです。もし15人の政党があり、不祥事を起こした5人を非公認とすることで10人が当選するのなら、党は迷わず5人を切ります。このリアリズムから考えると、石破茂首相が12人を非公認としたことだけで大騒ぎするのはピントがずれていると言わざるを得ません。しかし、その一方で『石破首相の決断で国民は自民党支持に転じるのか』という問題が重要な論点として浮上するのも当然だと思います」
結局は選挙対策
解散前、自民党における衆議院議員の数は250人を超えていた。12人を非公認とすることで、他の立候補者が当選するのなら、石破首相の決断は正しかったことになる。だが、本当にそうなるのだろうか──? 実のところ当初、石破首相も含めて自民党内では全員を公認する考えが主流だったようだ。それが一変したのが、自民党が独自に行った選挙区の情勢調査だった。裏金議員の苦戦が鮮明となり、小泉進次郎・選挙対策委員長は厳しい対応に改めるよう主張したという。担当記者が言う。 「必要に迫られた結果、石破首相や党幹部は裏金議員の非公認を決めました。端的に言えば、“選挙に強い議員”と“選挙に弱い議員”が、自民党に対する逆風を止めるため“スケープゴート”にされたということです。選挙に強い議員は非公認でも当選できます。一方、弱い議員は公認しても落選する可能性が高い。彼らを非公認として槍玉に挙げることで、国民は自民党の“英断”を支持すると期待したのでしょう。全体を見ると不記載の額が少なくても非公認となったり、額が多くても公認されたりする議員が続出したのは、不記載の悪質性や反省の態度などがほぼ不問とされたからです。要するに自民党幹部は『その議員が選挙で勝つか、負けるか』だけを考えていたのです」