もがき苦しみ、はい上がる!ヤクルト21年ドラ1左腕・山下が悲壮決意「来年もしダメだったらもう終わり」
もがき苦しみながら、はい上がろうとしている。ヤクルトの3年目左腕・山下輝投手(25)は悲壮な決意とともに秋季キャンプに参加している。 「来年もしダメだったら、もう終わりだと思っているので」 木更津総合(千葉)では3度甲子園に出場し、法大では最速151キロを誇る豪腕サウスポーとして脚光を浴びた。21年ドラフトでは12人しかいない「1位」で念願のプロ入りを果たした。輝かしい未来が期待されていたが、この3年間で戦ってきたのはライバル球団の打者でもなければ、同僚の投手でもなく、度重なるケガだった。 ドラフト指名直後に左尺骨の疲労骨折が判明し、1軍合流はシーズン終盤にずれ込んだ。22年9月30日の広島戦でプロ初勝利。日本シリーズで先発登板も果たしたが、いつしか1軍のマウンドはとても遠い場所になってしまった。 「1年目の初勝利の時はここからステップアップしていくんだ、という気持ちだったんですが…」 翌23年の春季キャンプは1軍スタートだったが、左肘を痛めて途中離脱。9月23日のイースタン・リーグの西武戦で実戦復帰したものの、1軍から声がかかることがないまま2年目を終えた。3年目の今季も1軍登板はなし。イースタン・リーグでの成績は19試合で3勝5敗、防御率5・89で「1年間、投げることができたのは良かったけど、本来の投球にはほど遠い投球でした。情けないし、悔しいシーズン」と振り返る。 ただ、下を向いている時間はない。「真っすぐの強さを戻す」ことをテーマに掲げ、秋季キャンプで精力的に投げ込みを敢行している。さらにウエートトレーニングも強化。フェニックス・リーグでは最速143キロも、常時140キロ台後半の直球を投げられるようになれば、1軍の投手陣に割って入ることも可能だ。 高校の1学年先輩の楽天・早川や、同学年でドラフト同期の隅田(西日本工大)が侍ジャパンのメンバーとしてプレミア12に出場する。「やっぱり悔しいですよね。特に早川さんは高校時代からずっと追いかけていた存在。少しでも近づきたいと思うんですけど、今は天と地ぐらい差がある」。同世代の活躍と自分を比較してふがいなさを感じることもあるが、この悔しさも糧にする。 秋季キャンプは17日で終了するが、息つく間もなく台湾で開催される「アジア・ウインター・ベースボールリーグ」(11月23日~12月15日)に参加することが決まっている。 背番号は「15」から「49」に変更されることが決まった。チーム内では「かがやき」のニックネームで呼ばれている。3年前の“ドライチ”は苦難を乗り越え、来季こそ1軍の舞台で輝けるかどうか。名は体を表す。山下にはこの格言を証明してほしい。(記者コラム・重光 晋太郎)