パリ進出のヘラルボニー、松田Co-CEO「障害という言葉なしで商品が買われるように」
――「障害者で金もうけをするな」と言われたとき、それをどう受け止めたのですか。 受け止めてもいないかもしれないですね。というのも、知的障害のある作家の作品を見たとき、圧倒的な感動があるという事実があったからです。24歳か25歳ごろのことですが、私自身、本当に心から感動したんですよ。 ところがインターネットで「障害 アート」で検索したら、支援や貢献の文脈でCSRやSDGsといった、企業の社会貢献活動とひも付いていて、作品のよさとあまりに乖離(かいり)しているなと思ったんですよね。 彼らは作家として実力があると思うんですね。例えば、ずっと迷路を描き続ける高田祐(ゆう)さんという作家がいます。木村全彦(まさひこ)さんという方は、「キュニキュニ」と名付けた「E」みたいな文様ですべての作品を描いてしまう。 伊賀敢男留(いが・かおる)さんは、青をモチーフにした作品を描きますし、井口直人さんはコンビニエンスストアのコピー機で毎日、顔面をコピーしちゃうんですよ。小林覚(さとる)さんは字と字をつないで書いてしまう。これがずっと好きでやっています。 結局のところ、彼らは好きでやってるんです。そしてそれは彼らの特性だからこそ描ける世界だと思います。
――彼らには独特な視点やセンスがあると? そうなんです。1時間とか2時間とか、いやむしろ365日ずっとやり続けたいと思っているわけで。無意味だと言う人もいるかもしれませんが、彼らが変わる必要は何もなくて、むしろ私たちがそれをどうとらえるかによって変わってくるものがあるんじゃないかと思います。
――今名前を挙げていただいた方たちのような作家はたくさんいらっしゃる? たくさんいます。私たちが今契約している作家で、約240人います。海外の作家も含めてどんどん増えています。「金沢21世紀美術館」のチーフキュレーター、黒澤浩美が顧問として加わり、作品を見てくれているので、アートとしての価値が生まれる状況も作っています。