パリ進出のヘラルボニー、松田Co-CEO「障害という言葉なしで商品が買われるように」
――企業が自国の作家の作品に興味を持つという同じようなニーズは、ヨーロッパに限らずですよね。となると、ちょっと先走ってしまいますけど、ほかの地域への進出も考えているのですか。 次はアメリカに進出できたらうれしいですし、さらに次は中国かシンガポールなのか、そこはまだわかりませんが、とにかく世界各国に展開できたらと思っています。
――創業から6年で海外進出というのはとても早いと感じたのですが、ご自身の実感はいかがでしょうか。予定通りだったのか、予想外だったのか。 そこは想像通りというわけではないですね。本当に色んな人たちの応援が積み重なって今、この場所に立てたわけですし、皆さんにすごく感謝しています。 エクイティファイナンス(第三者割当増資など)で資金を調達し始めてからは、私たちのマインドも結構変わり、海外展開も視野に入ってきました。なので、ヘラルボニーとしては初めての国際アートアワードとなる「HERALBONY Art Prize 2024」を今年始めました。世界28の国と地域から約900人の作家、2千点近いアート作品が集まりました。 こうしたことがきっかけで、ヘラルボニーと契約させていただく作家がどんどん増えてきています。これだけの規模で知的障害がある作家とライセンス契約を結んでいる会社はほかにないので、障害のある数多くの才能ある作家のキャリアを後押しし、価値や概念を国内外で変えていけるよう頑張りたいと思っています。
――社会課題系のスタートアップが最近増えていますが、障害者関連の事業をマネタイズするのはとりわけ難しいと思います。起業したばかりのころは特に実感されたと思うのですが、いかがでしょうか。 会社を創業した当初は、「障害者で金もうけをするな」といった、わかりやすい批判もありました。これは何でしょう、ある種消しようがないものだと思うんです。 例えば障害という言葉に対して、日本では8割以上の人がネガティブな印象を持っていると言われています。 この言葉が持つネガティブな引力、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)はとても大きいと思います。 それでも、たとえ全員は難しくても、私たちが頑張ることで、色んな人たちが一歩踏み出しやすくなったり、多様な価値観が広がったりすることがめちゃくちゃ重要なんだろうなと思っています。 ヘラルボニーを通じて、障害に対するイメージがポジティブな方向に変わったという人は、EC上のアンケートだと7割以上いました。私たちの目線は社会に向いていて、障害の概念が変わっていけば、障害のある方に関係する事業をやられている方もやりやすくなるのではないかなと思っています。