“有事の金買い”「金価格は25年も上昇」とプロが予想 昭和の“喜平チェーン”も再注目?
もう一つが、地政学リスクだ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は終わりが見えないうえ、中東ではイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘が激化し、さらにシリア政府崩壊など戦争範囲が広がる懸念もある。 世界的に有事が起きて世界経済の先行き不安が高まると、安全資産の金が買われやすくなるという。“有事の金買い”だ。 「ここ10年以上のトレンドとして、新興国の中央銀行が金を購入しています。コロナ禍や紛争などの影響による世界経済の先行き不透明感や米ドルの供給増によるドル価値の低下に備え、安全資産であるゴールドを外貨準備として購入し続けているのです」 ■スポット購入制度 そこにトランプ新政権の政策で世界経済が混乱することになれば、金価格は2025年もさらに上昇する可能性があるという。 「日本国内で購入すると、金相場はドル建てのため、円高は価格を押し下げる要因になります。そういったときに購入して、長期保有するというスタンスで、分散投資することをお勧めしています」 亀井さんがお勧めしている金投資の基本は純金積み立てだ。無理のない範囲で1000円から積み立てできる。金価格が下がったときに買い増しできる「スポット購入制度」を活用してもいいという。金ETF(上場投資信託)も分散投資のひとつに検討したい。ステート・ストリート銀行が管理する「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」、三菱UFJ信託銀行の「純金上場信託(金の果実シリーズ)」は、新NISAの成長投資枠でも購入できる。
「投資用金貨も日本ではウィーン金貨ハーモニー、メイプルリーフ金貨、カンガルー金貨、その3銘柄が購入できます。これらは日々の金価格に連動し価格が変わります。お金が必要になったときにすぐに現金化できるのも特徴です」 ■めがねのフレーム また、最近街中でよく見かけるのが「金、プラチナ買います」といった看板だ。 「国内で流通していない投資用金貨も換金できますが、取扱業者によって買い取りの値段が違ってくるため注意が必要。また、コレクターの間で人気がある収集型の金貨は金相場に連動しないので投資には向きません。発行枚数が少ないなど希少性があれば、そちらで価値が認められるものです。昔購入した宝飾品や金杯、めがねのフレームなど、意外な高値がつくかもしれません」 1980年代後期、バブルの時代はゴールドジュエリーが流行した。指輪だけでなく、輪をつないだチェーンを90度ひねって平らにした“喜平チェーン”は、昭和のメンズの定番ジュエリーだったが、これらが昨今、金相場の上昇にあいまって再注目されているとか。 バブル時代に購入した金商品をもう一度探して、これからの換金の参考にしてみよう。 (村田くみ) 亀井幸一郎(かめい・こういちろう)/金融・貴金属アナリスト。中央大学法学部卒業後、山一証券に8年間勤務し、日本初のFP会社である投資顧問会社MMI入社。1992年に世界的な金の広報・調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。2002年からマーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。『インフレ、円安にも負けない! 今こそ「金」』(主婦の友社)など著書多数。
村田くみ