戦争遺跡、高大合同で巡検 奄美大島要塞跡など見学
高大連携による地域資源の新たな価値付けを目指し、鹿児島大学と県立古仁屋高校、県立指宿高校は21~23日、瀬戸内町の戦争遺跡などを巡る「奄美大島合同巡検」を実施した。学生や生徒、教諭ら約20が参加。実地調査や講習を通し、島に数多く残る近代遺跡の魅力や活用、課題などについて考察した。
鹿大法文学部付属「鹿児島の近現代」教育研究センターの地域マネジメント教育研究プロジェクト「地域に生きる、歴史に生きる 高大生の歴史実践と協働型価値創造」の一環。地域資源の発見や保存、活用などに取り組む学生らの活動を支援し、地域人材や専門人材の育成を目的とする。 初日の21日、奄美大島要塞(ようさい)司令部跡地でもある古仁屋高で、町教育委員会社会教育課の鼎丈太郎学芸員が2023年3月に国史跡に指定された「奄美大島要塞跡(西古見砲台跡、安脚場砲台跡、手安弾薬本庫跡)」をはじめとする近代遺跡について講話した他、同高まちづくり研究所(立神倫史顧問)の生徒が研究成果や活動を発表。 また、町埋蔵文化財センターに寄贈された水上特攻艇「震洋」の模型を囲み、同町に配備されていた震洋隊の歴史、戦争と平和についても意見を交わした。翌日の22日には加計呂麻島に渡り、第18震洋隊格納壕跡や島尾敏雄文学記念碑などを巡検。最終日の23日は、奄美市の高千穂神社、龍郷町りゅうがく館文化財展示室などにも足を運んだ。 古仁屋高校の生徒は「世代や地域を超えた交流はとても刺激になり、地元の資源を知ってもらえる好機にもなった」と語り、鹿大3年の出羽空さん(20)は「自分より下の年代が研究し、おのおのでできることを考えて模索する姿に、負けてはいられないと鼓舞された。とても良い経験となった」と話した。 プロジェクトを総括する鹿大法文学部人文学科の石田智子准教授(43)は「文化財は専門家が守るというイメージが強いが、実際は一般の人も多く関わっており、高校生や大学生が実践的に動いていることを知っていただき、『誰か』ではなく『自ら』が地域資源に携わるという意識につながればうれしい」と述べた。成果報告会は来年1月下旬で実施される予定。