<きみの色>山田尚子監督インタビュー(2) 無意識に訴えかける映像 思春期を描くこだわり「キャラクターの尊厳を絶対に守る」
画面に空気の粒子のようなものが描かれているシーンもあり、それも無意識の作用を意識した表現だという。
「そうすることで、ちょっと懐かしい気持ち、何かを振り返るような気持ちになってもらえたらと。でも、今を焼き付けているフィルムの印象にもしたいので、見ている人が自分でカメラを持って撮っているような、そんな画作りを目指しました」
◇この世界の中をのぞいている集中力を切らさない音楽
美しい映像と共に「きみの色」の見どころとなっているのが、3人の高校生の主人公、トツ子、きみ、ルイによるバンドの初舞台となる学園祭での演奏シーンだ。作中で3人が制作し、演奏する楽曲「水金地火木土天アーメン」「あるく」「反省文~善きもの美しきもの真実なるもの~」は、山田監督が作詞し、牛尾さんが作曲を手がけた。山田監督は「しっかり地に足をつけたシーンにしたかった」と演奏シーンのこだわりを語る。
「どの楽曲も、音数を多くせず、派手派手しくないようにと牛尾さんにお願いをしました。音数を少なくする分、一つ一つの音を深めたいと。音と色と動き、キャラクターの感情と、全てのレイヤーが重なって、しっかり地に足をつけたシーンにしたかったので、楽曲だけが飛び抜けないように、でも足りなくないように、というバランスで作っていこうとしました。音の少なさがより彼女たちの感情の呼び水になる。あとは見ている方にとっても、この世界の中をのぞいている集中力を切らさない音楽、彼女たちが演奏しているのが納得できる音楽というものを大事にしました」
トツ子たちは、バンドを組んで数カ月で、初めて自分たちで作った楽曲を学園祭で披露することになる。トツ子たちが歩んだ道と地続きになるような音楽を目指した。
「ちゃんと3人が作った音楽で、それを3人が演奏している。という世界を壊さないように大切に描きました」
トツ子たちの集大成である学園祭のライブに観客が没入できるよう、まさに学校の体育館でライブを見ているかのような体験ができるよう、丁寧に繊細に作り上げられていった「きみの色」。改めて山田監督に思春期の子供たちを描く上で、大切にしていることを聞いた。