パリ五輪コースは「池のあるリンクス」 フランス育ちの日本人キャディに聞いてみた
神田さんが「池の要素があるリンクス」と表現する通り、1番のティショットから、真っすぐ飛ばすと左サイドに広がる池まで突き抜けてしまう危険性がある右ドッグレッグ。グリーンの手前はさらに池が食い込んで花道を使いづらくしているため、“右に逃げればOK”と割り切ることもできない。2番(パー3)は池に近い左ピンが厄介。実際、そこにピンが切られた23年最終日、センター狙いで少しつかまった比嘉のボールは右からの風に流され、池に2発を打ち込むトリプルボギーとなった。 ひときわタフなのが15番からの上がり4ホール。15番と18番は池に囲まれた浮島グリーンのパー4(オリンピックは女子のみ18番がパー5)。18番はフェアウェイが硬く、ボールが転がるコンディションになると、310ydほど先の池への突き抜けを警戒する必要が出てくる。池が絡まない右のルートはラフとポットバンカーが待ち受け、キャリーで310ydを飛ばさなくてはならない。「18番は“中途半端に飛ぶ人”が一番難しいんです」
丘の上からティショットを打ち下ろしたり、打ち上げのセカンドであったり、リンクススタイルのコースでありながら随所にアップダウンが利いている18ホール。例年ラフも深い。「結構ラフがねちっこくて、狙えるか狙えないか、絶妙な加減で選択を求めてくるんです」。昨年の比嘉は右ドッグレッグの13番で正面のラフまで突き抜けた後、9Iで130ydも飛ばせず、池に落としてトラブルにつながった。ティショットさえ成功すれば“トントン拍子”でスコアを伸ばせそうなのに、ラフに入った瞬間に考えることが一気に増える。 グリーンにはポアナ芝も入っていて、転がりが不規則だったりするという。久常が優勝し、比嘉も6位に食い込んだが、「もっと“日本人向きのコース”は欧州ツアーにたくさんあると思いますし、日本人選手が海外のコースに適応したゴルフをできるようになってきた結果ではないでしょうか。その点、特に松山英樹選手は全英オープンやスコティッシュオープンを何度も戦っているので、きっと対応できるはずです」。今季インドで優勝した中島を含め、日本代表2人の豊富な国際経験はメダル獲得へ心強い武器になる。 □神田七保海(かんだ・なおみ) 1991年、フランス・シャモニー生まれ。6歳からゴルフを始め、高校までフランスで過ごした後に両親のルーツである日本に進路を定めて東北福祉大へ。卒業後はスポーツマネジメント会社に就職する傍ら、同大出身で同い年の富村真治が2015年「全英オープン」に出場した際のキャディを頼まれたことがきっかけでツアーの世界に飛び込んだ。谷原秀人の欧州ツアー時代もバッグを担ぎ、23年からは比嘉一貴のエースキャディを務める。