「秋のバケーション」がトレンドに…ヨーロッパで人気の旅行先は?(海外)
複数の高級志向の旅行代理店が、夏ではなく秋にバケーションを楽しむ旅行者が増えていると証言している。 【全画像をみる】「秋のバケーション」がトレンドに…ヨーロッパで人気の旅行先は? ある代理店では、今や9月の予約数が、6月、7月、8月を上回っているという。 ピークシーズン前後の「ショルダーシーズン」と呼ばれる時期を選ぶことで、旅行者には、夏の人混みや多額の出費を避けられるメリットがある。 来年の夏にヨーロッパに行きたいと考え、どこに行こうかと迷っている人はいるだろうか。 その場合、イワシ料理を楽しむのに、わざわざポルトガルに立ち寄る必要はない。ローマやアテネなどの街に向かえば、限りなく近い体験を味わうことができる──こうした街では、まるで缶詰にされたイワシのごとく、観光客がひしめいているからだ。 夏は従来から、一番人気がある旅行シーズンだ。学校が休みになる上に、気候もよく、太陽の光を浴びると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの脳内分泌も活性化される。そのため、バケーション先として人気のエリアはどこもすし詰め状態になる。あまりの混雑ぶりに、今では多くの旅行者が、休暇の時期として、夏よりも秋を選ぶという現象も起きている。 休暇旅行を楽しむ人々の間では、これまでの夏の休暇に代えて、ハイシーズンと閑散期の間にあたる、ショルダーシーズンと呼ばれる時期(秋もここに含まれる)に休みを取る人が増えている。高級志向の旅行代理店で、旅行施設を結ぶトラベルネットワークを運営するヴァーチュオソ(Virtuoso)では、2024年秋季の予約数が、前年比で23%増加したという。これは、同社のグローバル広報担当バイスプレジデントを務めるミスティ・ベルズ(Misty Belles)氏が、Business Insiderに明かした数字だ。 友人たちに「どこで夏を過ごしたの?」と聞くのはもうやめよう。今尋ねるべきなのは、「秋を過ごした場所」だ。
トレンドになりつつある秋のバケーション
秋の旅行では、紅葉スポットを目指すケースも多い。エアビーアンドビー(Airbnb)やVrboなどのプラットフォームにおけるバケーションレンタル物件の動向を追跡しているAirDNAに取材したところ、ニューヨーク州の自然豊かな地域や、メイン州の海沿いなど、紅葉の美しさで知られる人気スポットでは、需要が2023年比で19.7%上昇しているという。 ピークシーズンを外した休暇旅行をするこうした人々のなかには、これまで夏の旅行先の定番とされてきたヨーロッパなどの地域を訪れる人も多い。 旅行予約サービス企業ホッパー(Hopper)はBusiness Insiderの取材に対して、2023年に同プラットフォームで予約されたヨーロッパ行きの休暇旅行のうち、9月と10月が占める割合は23%に達し、コロナ禍前の2019年と比較して5ポイント上昇したと語った。 一方、旅行代理店スコット・ダンの子会社で、完全招待制でサービスを提供している「スコット・ダン・プライベート」で旅行担当マネージャーを務めるジャッキー・ロス(Jackie Roth)氏はBusiness Insiderに対し、同社の顧客は全員が秋の旅行を希望していると証言した。なお、スコット・ダン・プライベートの顧客が求めているのは、「手っ取り早く楽しめる激安旅行」ではない。同社の入会必須条件は、年間の旅行出費が10万ドル(約1500万円強)を超えることだからだ。 ロス氏によれば、スコット・ダン・プライベートで高級志向の旅行を手配するチームでは、従来は一番のピークシーズンだった6月、7月、8月よりも、9月に旅行したいという希望を受け付けることの方が多いという。その際の旅行先としては、イタリアやフランス、イギリスなどのヨーロッパの国が多いとのことだ。特にイタリアは、2023年9月から11月の実績で見ると、外国人旅行客の訪問数が、前年比で15.5%増えている。 スコット・ダン・プライベートでトラベルマネージャーを務めるジュリー・ダーソー氏は、「人混みに悩まされることなく人気の観光スポットを満喫できるのであれば、たとえビーチに出かけられず、傘が手放せなくてもかまわないと旅行客は考えている」と指摘する。さらに、同社チームはトスカーナ地方の宿泊施設と連携し、11月まで営業を続けてもらう方向で話を進めていると、同氏は付け加えた。 秋のバケーションが富裕層のあいだで人気を集める理由 ピークシーズンの混雑や旅行代金の高騰を避けたいという人にとっては、秋は旅行にうってつけの時期になるだろう。アメリカではこの時期、大半の子どもは学校に戻っている。そしてAirbnbによれば、同サービスのバケーションレンタル物件の宿泊費は、9月から11月にかけて最安になる傾向があるという。 また、旅行予約プラットフォーム「カヤック(Kayak)」のデータによれば、イタリアの3つ星および4つ星のホテルでは、1泊あたりの宿泊費の平均額が、2024年の夏から秋にかけて3%下落したとのことだ。特にサルデーニャ島のカリアリでは、下落幅は22%近くに達した。 学校のスケジュールに縛られない家族であれば、この時期の1週間の方が、海外旅行に向いているだろう。あるいは、学校を休ませるという方法もある。 コンシェルジュサービスのクインテセンシャリー(Quintessentially)で旅行部門担当のシニアバイスプレジデントを務めるケリー・グラムバック(Kelly Grumbach)氏はBusiness Insiderに対し、同社顧客の約20~25%が、ショルダーシーズンに1週間の休暇旅行に出かけるため、子どもに学校を休ませていると証言した。これは、「アメリカ人観光客に囲まれる」ことや、ピークシーズンの宿泊費で「法外な支出を迫られる」ことを避けるためだという。 グラムバック氏によれば、クインテセンシャリーで予約を請け負う秋の旅行の大半では、行き先は、イタリア南部のアマルフィ海岸やシチリア島といったヨーロッパの観光地だという。同氏はさらに、シチリア島への旅行に関して、9月末から10月はじめであれば、7月や8月の宿泊費と比べて「ごくわずかな額」に抑えられると述べた。 加えて、一般的に言って、気候もまだ非常に快適だ。 「事情通の旅行者は、9月や10月にイタリアのカプリ島、あるいは南仏を訪れれば、海もまだ温かく、人は少なく、価格も安く済むことに気づいている」 高級志向の旅行代理店、インダガーレ(Indagare)のメリッサ・ビッグス・ブラッドリー(Melissa Biggs Bradley)最高経営責任者(CEO)は、Business Insider宛てのメールでこう述べた。「当社の顧客は、特別な宿泊施設に大枚をはたくべきタイミングと、節約すべきタイミングを、より慎重に見極めるようになっている」とのことだ(ちなみに、同社の会員制度には2つのタイプがあり、高額な方では2850ドル=約43万7000円の年会費がかかる)。 また、高級志向の旅行商品卸会社、クラシック・バケーションズ(Classic Vacations)のメリッサ・クルーガー(Melissa Krueger)CEOは、イチ推しの時期として10月を挙げ、「世界各地を旅行するならベストシーズンだ」と称賛している。9月末の時点で、クラシック・バケーションが手配する案件の20%は「10月から12月の3カ月間の旅行」が占めている。中でも10月分は、予約全体の7%に達したという。