サーフミュージックを築いたジャック・ジョンソン「今はパーフェクトな波に乗れているよ」
── 今回のツアーを波のサイズに例えるなら? ジャック 良い質問だね。長年のツアーを振り返ってみると、3rdアルバム『イン・ビトウィーン・ドリームス』をリリースした時が、自分のキャリアのピークになると感じていた。 僕は、すべての物事には自然な流れがあると思っている。アーティストの場合、自分自身とあえて競争し続けることで、より大きな存在になり続け、人気を維持したいと思う人も多いけれど、僕は違っていて。物事がある時点まで成長するのも、そこに辿り着けたことも自然の流れだと受け止めていた。 だから、その波にあえて立ち向かおうとか、もっと自分と競おうとは思わなかったんだ。ただ、この仕事を続けられていることに感謝しているし、幸運だと感じている。人々のために音楽を演奏することは、とても名誉なこと。 同時に、ものすごくエネルギーがいることでもある。神経が張り詰めるし、多くの人やエネルギーと接することで緊張感も生まれるから。僕にとって、3rdアルバムの頃(2005年前後)は緊張の連続だった。 でも今は、ほどよい規模・距離で人々のために音楽を演奏する、いいバランスを保つことができている。ストレスも少ないし、神経をすり減らすこともない。当時の波のサイズは、20フィート(約6メートル)くらいあった。でも今は、4~6フィート(約1.5メートル)まで落ちて、オフショアで快適でパーフェクトな波に乗れていると思うね(笑)。
僕の頭の中を占めているのは、サーフィンと農業教育プロジェクトと音楽ツアー
── また、妻のキムとともに、ハワイで教育ボランティア団体「コクア・ハワイ財団」を立ち上げてますね。 ジャック ツアーがない時は、それが僕の仕事の主体となっている。子どもたちとコミュニティのための学習農場があって、遠足で彼らがスクールバスでやってきて、いろいろなものを見て周るんだ。 小さい子どもは、蝶を見たり、ミツバチを見たり、その巣を覗くこともできる。年長の子には、食べ物を自分たちで育てるプログラムがあるんだ。農場に来て、食べ物を育て、収穫した材料を使って料理を作り、それらがどこから来るのか、健康的な習慣とはどのようなものなのかを学ぶんだよ。 バランスが取れているのはすごくよいことで、この活動を挟んでいるからこそひと休みできて、またツアーに出るのが楽しみになる。サーフィン以外で僕の頭の中を占めているのは、このプロジェクトとツアーだね。 ── 公演では、その活動を日本のオーディエンスに紹介する予定? ジャック 考えてはなかったけど、それはよいアイデアだね。ハワイでショーをする時は、いつも地元のミュージシャンを招いて「コクア・フェスティバル」をやるんだ。プロジェクトの資金集めになるし、いろいろな情報も得られる。 ツアーでも、その地域で素晴らしい活動をしている人に注目が集まるように、音楽に限らず紹介するようにしているんだけれど。日本の皆んながハワイに遊びに来た時に、コクアの農場でボランティア活動をしたくなったりとか、日本公演でアナウンスできたらいいね。 ── ツアー終了後の、2024年の音楽活動は? ジャック 2023年はツアーもあったし、コクアがスタートして20年ということもあって、たくさんのプロジェクトをやった。だから今年は、家族のために時間を費やしたいと思っている。 ── じゃあ、次のアルバムは来年以降になりそうですね。 ジャック そうだね。まず「今書いている楽曲は誰にも聴かれていない」と思い込ませる段階まで自分をもっていかないといけないから。ツアー中は、それができない。人に聴かれることを考えすぎて、音を編集しすぎてしまったり、自然なところから曲が生まれなくなってしまうんだよ。 取材を受けている期間や大観衆の視線がある時は、それが難しいから。より純粋に曲が書ける状態に、まずは自分を戻すことから始めないと。だから、次のアルバムは早くて2025年になるだろうね。