「毎年欠かさずやってます」料理好き・トニセン長野博さんがハマった“手しごと”とは?
小竹:思い出の料理をよく聞くのですが、味よりもどういう風に行ったかとか誰と行ったかみたいなストーリーの話が思い出の料理につながっている人は多いです。 長野:うんうん。興味を持ち始めたのとは違うかもしれないですけど、バイトをして自分で稼いだお金で食べるとか、そういうものでやっぱり意識が変わってきますよね。
工程をわかって食べたほうが絶対においしい
小竹:ちなみに、最初に自分でお金を払って食べたものは? 長野:高校生くらいの頃から行っている焼肉屋さんがあって、ものすごく安いんです。もう食べられないというくらい食べて、1人2500円とか。友達も何度も連れて行って、その友達も「あの店また行こうぜ」ってリピートしたくなるようなお店なんです。 小竹:たしかに安い! 長野:東京に住むようになってからも、東京の友達をわざわざ地元に連れて行ってそのお店に行っていました。その当時から少しは値上がりしていますけど、今でもお店は現存しています。そのお店は自分のお金で払って食べていましたね。 小竹:自分で払うとまた違いますよね。 長野:やっぱり意識も違いますしね。高校卒業して専門学校が横浜だったのですが、まだ東京に1軒もないときに家系ラーメンのお店がたくさんあって、友達がひとり暮らしをしているアパートの下も家系ラーメン店でそこで食べたりしていたのですが、行く時間によってスープの味が変わるんです。 小竹:より濃厚になるみたいな感じですか? 長野:そういう感覚もありましたし、働いている人でも変わるんです。そこで味の違いに気づき始めて、いろいろな家系ラーメン店に行き出したみたいなのがスタートですかね。だから、食べ歩きは家系ラーメンから。自分のお金で払って食べ歩きを始めたのはラーメンからなんです。 小竹:食べ歩きを始めた中で、今でも忘れられない味や料理はありますか? 長野:今でこそクオリティの高い食べ放題のお店がいっぱいありますけど、僕が高校生当時も食べ放題のお店は結構あったんです。そこも親が連れて行ってくれたのですが、ロースなのかカルビなのか何の肉なのかわからないけど、お腹いっぱいになるからいいやみたいな感じで(笑)。 小竹:うんうん(笑)。 長野:そういうお店で焼肉を食べていたのですが、あるとき友達が焼肉専門店に連れて行ってくれたんです。そこで「焼肉っておいしい!」と改めて感じて。「タン塩を頼んでいいよ」と言われて、そういう言い方をするということはタン塩は高いんだなとか感じながら食べたのはすごく覚えています。 小竹:私は高校生のときにバブルだったので、いろいろなお肉を食べた記憶がありますが、私もお肉の区別はできませんでしたね。 長野:当時は今みたいに部位を出す時代でもないですし、わかりやすい部位だけでしたしね。こういう部位を食べようという意識も全くなく食べていたけど、「タンってこんな感じなんだ」みたいな感じでしたね。 小竹:焼肉やラーメンは今でもお好きですか? 長野:今でも食べますけど、今はもうオールジャンルです。麺でも甘いものでも全てです。ソフトクリームならソフトクリーム、わらび餅ならわらび餅、大福なら大福みたいに、それだけをピンポイントではしごすることもあります。 小竹:お話を聞いていると、味だけではなく、人を見たりお店を見たりする感じですか? 長野:人やお店よりも物を見ちゃいますね。例えば、ソフトクリームであれば、素材や質、製造する機械も見ます。かき氷も大体2社なので、どっちの会社の機械を使っているのかなとか。 小竹:どういう氷を使っているのかとか? 長野:氷は大体は純氷か天然氷かに分かれるので、天然氷ならどこの蔵元なのかもあるし、純氷なら純氷でいろいろな会社がありますから。それよりも削りとシロップをどういう風に作り上げようとしているのかなとかですね。 小竹:そこに興味があるのですね。 長野:お客様の前に出るまでにどういう工程を通ってきているのか。素材も料理の工程もどういう人が作っているのかも全てに興味があります。わかって食べたほうが絶対に楽しいし、本当はすごいのにスルーしているのはもったいないと思うので、そこはキャッチしたいです。