指名漏れから2度目ドラフトを待つ異色の155キロ大谷世代右腕
メジャーリーガー・大谷翔平(エンゼルス)が牽引する「大谷世代」が社会人2年目となり、ドラフト解禁年を迎えている。注目の一人が、3年前の流通経済大時代に「公務員になりたい」発言で話題をさらい、結局、ドラフト漏れとなった異色の最速155キロ右腕、生田目(なばため)翼(23、日本通運)だ。上位指名が有力視される即戦力右腕のドラフト直前の心境に迫った。 群馬県太田市運動公園野球場のバックネット裏を12球団のスカウトが占領していた。9月10日。日本選手権大会・関東代表決定戦の初戦となるSUBARU戦の先発を任されたのが生田目だった。負けたら終わりの一発勝負。しかも、相手のお膝元という“完全アウェー“の中、11回の延長に入っても力投が続く。この日の最速は148キロ。得意の縦のスライダーとフォークに加えて、「緩急をうまく使いたい」と、今季から再び投げ始めたスローカーブを駆使して、10回1/3で131球を投げて無失点。7安打7奪三振の内容だった。 176センチ、84キロの本格右腕。気迫あふれるピッチングの迫力と、大きな左足のステップから沈み込むような下半身の安定感が魅力だ。 この力投に、ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスクは「ここぞと言う時にギアを上げられて、ペース配分ができている。大学時は勢いで目一杯投げていたが、投球にメリハリができ、幅が広がった。社会人の中でも完成度が高く、トップクラス。(上位候補)24人の中に十分入る」と、高評価。 また日通OBでもあるオリックス・牧田勝吾チーフスカウトも「昨年に比べ、エースとして一本立ちした。向かっていく姿勢が伝わってきた。(今回の力投は)都市対抗の途中降板が原動力になっているのでは」と納得顔だった。 水戸工から流経大に進んだ生田目は、大学3年時にリーグ戦で155キロをマークし、同校29年ぶりとなる大学選手権の準Vに貢献。件の公務員発言は、その初戦の直後に、将来はプロか、と聞かれて、飛び出したものだった。 「転勤のない市役所職員なら安定した生活を送れて、大好きな地元・茨城から離れずにすむ」のと、小学校教諭の兄に影響されて、そう考えていたという。 しかし「野球人生の中でベストピッチ」と語る、準決勝の神奈川大戦で、初回以外は、2塁すら踏ませぬ2安打完封勝利をつかみ、一転、プロ志望へ心変わりした。 「そこまでのレベルの選手じゃないと思っていたけど、自信になった」