「アメリカの銃」AR15型…多数の命奪ったその引き金は軽かった 現地射撃場で記者が試射、性能と手軽さは乱射の悲劇にも
米国で銃乱射事件が起きると、メディアはある一点に注目する。凶器が「AR15型ライフル」かどうか―。手軽さと高い性能から米国人をとりこにしながら、事件で多数の犠牲者を出してきた表裏一体の性質を持つ銃だ。「アメリカ(A)のライフル(R)」とまで呼ばれる銃の存在を伝えようと法令に違反しないよう狩猟免許を取得し、射撃場で試射した。奪われてきた命の重さを思うと、その引き金はあまりにも軽かった。(共同通信ニューヨーク支局 稲葉俊之) ▽銃口管理 まず、いきなり外国人の記者が射撃場に行って試射できるのだろうか。単刀直入に言って答えはノーだった。アルコール・たばこ・銃器取締局や関係法令によると、米国に就労や就学の査証(ビザ)で滞在する外国人は銃器の取り扱いを禁じられている。 法令を詳しく見ると狩猟免許の取得者は例外だった。狩猟者講習の受講が必要で、拠点のニューヨークから最も近い会場は100キロ以上離れており、諦めかけたとき、米国人の同僚がオンライン講習を見つけてくれた。
講習では銃の仕組みから学ぶ。撃鉄で銃弾の雷管をたたいて内部の火薬を爆発させ、飛翔体(弾丸)を発射させる。英語の狩猟用語には戸惑った。楽しそうな「GAME(ゲーム)」は「獲物」、着飾りそうな「DRESS(ドレス)」は獲物を「さばく」という意味だった。 とにかく厳しいのは銃口と銃弾の管理。どんな状況でも銃口が安全な方向に向いていることを確認し、発砲するとき以外は弾倉から銃弾を抜くよう再三指導を受けた。 七面鳥の狩りでは特に注意を繰り返された。鳴き声をまねしておびき寄せるため、別の狩猟者を誤射してしまうことが頻発しているらしい。米国での〝狩猟あるある〟のようだ。狩猟の技術やルールなども学ぶ講習を2日間、数時間ずつかけて修了し、全てをおさらいする最終試験に合格した。 ▽疲労感 次のハードルは取材をさせてくれる射撃場だ。連絡しても無視か拒否されるばかり。乱射事件が起きれば銃規制の必要性が報じられるため、記者は歓迎されていないようだった。