阪神・近本の球宴サイクル達成を巡って賛否。アシストしたかに見えた全パ“忖度”はアリかナシか?
プロ野球のオールスターゲームの第2戦が13日、雨の甲子園球場で行われ、阪神の近本光司が、古田敦也以来、27年ぶりとなる史上2人目のサイクル安打を達成した。新人によるサイクル安打達成は初だが、ファンの間で賛否を巻き起こしているのが、王手をかけて一番難しい三塁打達成の場面をアシストしたかのように見えた全パの“忖度”の「アリ」「ナシ」についてだ。 本塁打、二塁打、ヒット、二塁打を打ち、サイクルに王手をかけた近本を7回二死一塁で打席に迎えた全パの外野は、なぜか前進守備を敷いた。センターの日ハム・西川遥輝などは、ファンに「もっと前を守れ」とヤジられたそうだが。ソフトバンクのアンダーハンド、高橋礼のストレートを逆方向に打ち上げた打球は、レフトの西武・秋山翔吾の頭上を越えていった。近本は、二塁を回って、一瞬、躊躇したが、秋山の打球処理がスローモーだったことを認めると三塁を狙った。しかも中継の西武・源田壮亮が一度、送球をためらい、おまけにボールはワンバウンドになった。クロスプレーのタイミングだったが、それを三塁のソフトバンク・松田宣浩が見事にスルー。空タッチで場内を沸かせたが、もちろん、グラブにはボールが入っていなかった。この外野の守備位置、中継プレー、松田のタッチプレーの3つの“忖度”を巡っての賛否である。 この最後の三塁打に関して近本は、ヒーローインタビューで「(前進守備だったので)いやあ、何としても打球を上げようと思っていたので、いいとこに飛んでくれて、いい形で、ええ…三塁打なったのでよかったです」と語ったが、「いいとこに飛んで」「いい形で、ええ…」というフレーズに“忖度サイクル”を理解していた場内は温かい笑いに包まれた。 ネット上では、早速、この三塁打を“アシスト”したかのように見えたプレーの「アリ」「ナシ」を巡って議論が起きた。 大半は賛成派で「お祭りなんだからOK」「目くじらを立て物議を醸すような問題じゃない」「ファンが喜んでいた」「アウトの打球をわざと落としたわけじゃない」「レフトオーバーになった打球も、そもそも5打数5安打を打ったことが素晴らしい」というような意見。 原口文仁、梅野隆太郎の阪神コンビに、筒香嘉智、鈴木誠也の全セを代表するスラッガーの本塁打攻勢で全セの10-3のワンサイドゲームとなっており、しかも、雨が降り止まない中でファンはレインコートを着て応援を続けていた。さらに近本は、甲子園を本拠地とする阪神の期待のルーキー。1試合5安打が2001年のペタジーニ以来、史上2人目となる快挙で、さまざまな“忖度”をする条件が揃っていたことを賛成の理由に挙げる声も少なくなかった。またこういう論争自体を「野暮」「無粋」という意見もあった。 一方、「スポーツのウソは嫌い。何にも感動できない」「八百長みたいなサイクル達成で嬉しいの?」という反対派の声もあった。“アシスト”の当事者の一人となった松田が、球宴前に「ガチンコ勝負の雰囲気」を欲する発言をしていたこととの矛盾を突く指摘も目立った。 中には、近本が一塁線を破った第2打席の二塁打を「あれを三塁打にできたのでは?」という指摘もあった。確かに近本の走塁は最初からスピードにのっておらず、はなから三塁は狙っていなかった。ここで勝負をかけておけば賛否は起きていなかったのかもしれない。