池上彰が石破首相に直撃「石破構文は改善できる」「企業・団体献金廃止になぜ反対か」【池上無双炸裂】対談前編
● 腹が立って論争して 勝っても仕方がない 池上 語録には「議員になろうが大臣になろうが、人間というものは神の前には塵芥(ちりあくた)のような存在」なのであって、他党を批判・非難せざるを得ない場面でも、「ただ自分たちだけが正しくて相手が間違っているという演説はなるべくしないようにしている」という言葉もあります。 とはいえ、総理総裁という立場になれば、日々の政治活動や国会答弁、選挙運動などで他党を批判することもありますよね。常にこうした自戒をしているのですか。 石破 例えば他党が国会に出てきますでしょ。予算委員会でもなんでも、時には罵倒されることもありますね。腹が立って論争に勝とうと思う気持ちもある一方で、相手も日本国憲法に基づく選挙によって選ばれた全国民の代表者。私たちとは主義主張は違うが、そうした質問者の後ろに何十万人もの支持者、国民がいるわけです。 そこでは、単に相手に論争で勝っても仕方がない。そうではなく、質問者の後ろにいる支持者や国民が政府の言っていることにも一理あると思うような話をしなければなりません。 私が若い頃、国会対策委員を務めたときには、大先輩だった竹下登先生、金丸信先生、渡部恒三先生たちから「賛成してもらうのは無理でも、納得してもらえるような答弁をしろ」と言われたものです。 特に少数与党の今は、一つ一つの予算や法案について、「それなら賛成しよう」と野党の方にも思ってもらえないと、通りませんからね。相手を納得させる努力は、これまでの10倍ぐらい必要なんじゃないでしょうか。 池上 なるほど。考えようによっては、これこそが民主主義の本来の姿だともいえますよね。 石破 本来の民主主義ってのは、政府、与党には政府、与党の考え方があり、野党の考え方があり、どこかに接点はないかしらと話し合うことで、それを見つけ合う作業の場が国会だと私はずっと思っているものですから。 池上 数の多数を頼んで決めてしまうのではなく、まさに熟議と納得によって政策を進めていく。時には相手との間で妥協点を見いだしていくことも必要で、そうした様子が今回の国会の議論からうかがえたのは大きな変化ですね。
石破 茂/池上 彰