「熊出没注意」看板を無視して「山に入る」人たちの”強烈すぎる本音”…「みんな旬の天然もの好きだろ」
突然藪から現れた男性の証言
以前までの記事『「遺体はすでに硬直し、足は曲がったままで…」秋田でクマに襲われ死亡した男性の「第一発見者」が明かす「恐怖の現場」』で報じた、今年5月に佐藤宏さんがクマ襲われた発荷峠(秋田県)から熊取平(秋田県)、迷ヶ平(青森県)、四角岳(岩手県)十和田奥入瀬(青森県)の周辺では、至るところに「熊出没注意」や「入山禁止」と記載された看板が立てられている。それでも山に入る人はいる。 【写真】「熊出没注意」「入山禁止」看板だらけの「異様な光景」…! 彼らはどうして危険を冒して山に入るのか。旬のものを食べたい気持ちは理解するが、クマと遭遇した際に起こりうることなどをどのように考えているのか。 クネクネと曲がり続ける県境の細道に車を走らせる。秋田県から青森県に抜ける視界の開けた道を過ぎると、鬱蒼とした森林地帯に入る。道路脇の暗がりに隠れるように一台の地元ナンバーの車が停まっていた。 誰が山に入っているのか。 しばらくたつと、頭にタオルを巻き、棒を持ち、大きなカゴを背負った男性が突然藪から現れた。 男性は明らかにこちらを歓迎していない不審な表情でこちらを見つめる。そして必要以上に大きな声で「なに?」「誰?」と続けて叫んだ。事情を話し、持参した缶コーヒーを渡す。 山では何を採っているのか。前編記事『「熊出没注意」看板を無視…!クマに喰われる危険を顧みず山菜を採りに行く人たちの“知られざる正体”』につづき、山で「採り屋」あるいは「採り子」(山菜などを採って生活をしている人)と呼ばれる、知られざる山人の話を紹介する。
「都会のカネ持ちが食べたがってる」
「みんな旬のもの食べるのが好きだろう。畑でできるものではなく人の手の入らない天然ものを欲しがるんだ。同じキノコでも味がまるで違うものな。ハウス栽培されたものなど形は立派でも味気ないよ。 都会の料亭や高級なスーパーからは山菜や根曲り竹、きのこなど時期になると注文が来る。そういう高級な店では輸入物は受け付けない。サイズの決まった新鮮な天然ものだけを欲しがる。都会のカネ持ちが食べたがるのだから業者も俺に催促をしてくる。 注文する側も食べる側も、俺らがどんな場所で、どんな風に採っているのかなど考えないのだろうな。旨い旨いと食べているだけで俺らがクマの巣に入っていることなど何も知らないのかもしれねえな。 ガソリン代が上がっても買取価格は上がらないが、生活のために山に採りに行くんだ。危険だから行くなって声があることも知ってる。実際に山に入る人間も高齢化が進んで減ってしまった。道がないところをずっと歩くから体力がいるんだよ。このクマ騒ぎでもっと減るだろうな。タケノコが分かりやすいけれど、山菜もキノコもこのままだと全部中国産になってしまうな。 いつクマに襲われてもおかしくない。帰って来れないこともあると覚悟はしている。かっちゃん(奥さん)にも、そういう時には自己責任として探してくれるなと言ってある。そのくらいの覚悟がないと山には入れなくなってしまったんだな。俺が子供の頃はもっと自由に山に入って遊んだもんだ。でもそれも昔のおとぎ話だ。ぜんぶ変わってしまったんだ」 年間を通じて山の幸を採っている男性に、年間スケジュールや売り上げなどを聞いてみた。