楽天・鈴木翔が“最強のセットアッパー”になった要因 飛躍のヒミツに迫る
楽天・鈴木翔天投手(28)は今季、セットアッパーとして抜群の安定感を誇った。球団記録を更新する28試合連続無失点など、49試合に投げて2勝0敗、24ホールド、1セーブで防御率1・66とブルペンを支えた。活躍が認められ、11月に行われたプレミア12では侍ジャパン入り。なぜ飛躍できたのかを振り返る。 今季は明確な課題と向き合っていた。昨季は12球団最多となる61試合に登板していたが、ある数字に納得がいっていなかった。被打率の高さだ。2023年の被打率は・236。その中でも鈴木翔にとって天敵だったのが右打者で、被打率は・273だった。昨年の契約更改では「変化球の少なさとかで、手詰まりになることが結構あった」と課題を挙げていた。 そこで新たに取り組んだのが、フォークの習得。左打者に対しては逃げていくスライダーがあったが、右打者には逃げる球がない分、対応されることが多かった。「右打者にも嫌だなと思われる球を作れたら、世界が変わる」と新球種に着手。2月の練習試合、3月のオープン戦序盤とフォームを崩し、制球が定まらない期間もあったが、青山、永井両投手コーチとのマンツーマン練習もあり徐々に改善。「今思えば大切な期間だった」と感謝した。 シーズンに入ると「(投球の)選択肢は間違いなく増えた」と、練習を重ねたフォークが威力を発揮。昨季までの対左をメインとしたワンポイント起用から、1イニングを任され、対右との対戦も増えたことで、経験値はどんどん上がった。 結果、今季の被打率は・149。対右に限っても・155と昨季より1割以上も改善し「(被打率を)極端に下げることができた」と納得。さらに今季は、計48回2/3を投げて被本塁打がゼロ。「去年は5本打たれて、中継ぎとしてその数は減らしたいと課題に挙げていたので、克服できてよかった」と、まさに“最強のセットアッパー”になっていた。 ただ、悔しさも残った。11月のプレミア12では左肘痛で途中離脱。シーズン終盤の9月にも「疲れが出た」とコンディション不良で一時、ベンチ外が続いた。不完全燃焼に終わっただけに「1年間戦い抜くフィジカルが必要。今年の反省を生かして、ケアを増やしたい」と話した。 来季は一番の武器である直球にさらに磨きをかける。侍ジャパンに入ったことで「より大事だと思った」とトップクラスのボールを肌で感じた。中でも阪神・才木の直球は衝撃的で「次元の違う球。僕も投げたい」と力を込めた。年々進化を遂げ、成績を伸ばしている鈴木翔。来季もブルペンの軸として、フル回転する。(デイリースポーツ・滋野航太)