公明、立ち位置に苦慮 政策実現も手柄は野党 来夏の都議選、参院選へアピール模索
公明党が自民党との連立政権で立ち位置に苦慮している。石破茂政権が少数与党になったことで、法案成立に向け野党の国民民主党や日本維新の会に配慮せざるを得なくなり、「政権の政策に党の主張を反映させる」という存在意義が揺らいでいるためだ。「年収103万円の壁」の引き上げなどは公明も主張してきた政策だったが、自民から譲歩を引き出した野党側の成果として扱われ公明は埋没している。 公明の斉藤鉄夫代表は2日、東京・池袋駅前で新春の街頭演説を行い、今夏の参院選、東京都議選に向けて「新しい公明の最初の戦いとして、何としても押し上げてほしい」と支持を訴えた。 だが、世論や支持者へのアピールは、いまいち広がりを欠いている。昨年12月26日、斉藤氏は記者団にこう強調した。 「予算案の取りまとめにあたっては、野党の賛同が得られるように合意形成の要となってきたという自負がある」 党の政策実現ではなく、合意形成への貢献をアピールせざるを得ないところに、今の立ち位置の難しさが伺える。 年収103万円の壁引き上げは自民、公明、国民民主の3党協議で実現し、これを看板政策とする国民民主の手柄とされた。公明も以前から103万円を含む年収の壁解消を訴えており、令和7年度税制改正には高校生世代の扶養控除の維持など公明の主張も反映されたが、存在感は乏しい。 それでも斉藤氏は2日の街頭演説で3党協議に言及し「予算審議の途中に、いろいろな修正がありうるのかもしれない。協議に真摯に対応していきたい」と国民民主への歩み寄りを示唆した。 石破政権は維新とも連携を図り、自公維3党による教育無償化の実務者協議を昨年末に始めた。教育無償化もまた、公明が力を入れてきた政策だ。公明幹部は「公明だけでは引き出せず、野党と一緒なら引き出せるといわれる。じくじたる思いだ」と漏らす。 先の衆院選で、公明は自民派閥のパーティー収入不記載事件のあおりを受けて議席を大幅に減らした。夏の参院選と都議選をにらんだ反転攻勢に向け、自民と同一視されることを避け、独自色を打ち出したい考えだ。自民内で賛否が分かれる選択的夫婦別姓制度でも、党内議論を深めるよう強く自民に要求している。 とはいえ、自民との連立関係を崩すこともできない。公明関係者は「支持者からはいつまで自民とやっているんだという声もある。だが、もう四半世紀続いている。野党になったら何もできない」とぼやいた。(長橋和之)