意外と難問。この結び目のほどけにくさ、わかりますか?
人類の死角が見つかったのかも。 靴ひもを結んだり、からまったケーブルをほどいたり、プレゼントにラッピングしたり…ひもやリボンを結んだりほどいたりする機会は多いし、みんなそれなりに結び目を使いこなしているはずです。それでも人間は結び目のことをよくわかってないらしい、そんな研究結果が出ました。 【全画像をみる】意外と難問。この結び目のほどけにくさ、わかりますか?
結び目の「わからなさ」
米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが、人間がいかに結び目を理解できていないかを明らかにしました。学術誌「Open Mind」に掲載された論文には、結び目は、我々の物理的推論能力の「死角」かもしれないとあります。 彼らの研究の動機になったのは刺繍でした。ある日ジョンズ・ホプキンス大学のChaz Firestone氏の研究室で博士課程に所属するSholei Croom氏は、自分が刺繍した作品の裏側を見て、刺繍糸がどうからまっているかを理解できなかったんです。普通の人ならあきらめて糸を切るところですが、Croom氏らはそれを研究のヒントにしたのですね。 「人は世界の物理性質が現実にどう動いているかをつねに予想しているものですが、結び目の何かが、直感的でないと感じました」とCroom氏は大学のプレスリリースで語っています。 「積み重ねた本は、触らなくてもその安定度合いがわかります。ボウリングのボールに触れなくても、何本のピンを倒せそうかは感じとれます。でも結び目は、我々の判断機構を興味深い形で制限しているようです。」 Croom氏とFirestone氏が行なった実験は、意外とシンプルです。同じように見えて強度の異なる結び目を4種類写真に撮り、実験参加者に2種類ずつ見せていって、どちらが強いか予想させたのです。4種類の画像は、こちらです。 結果、予想の外れっぷりは見事なほどでした。実験では、結び目の写真を見せるパターンや3D動画を見せるパターン、結び目の構造がわかりやすいように図解したパターンなどがあり、それぞれ50~100人の被験者がいましたが、どれも惨憺たる結果でした。 また、強度の予想が合っているときでも、回答の根拠が間違っていました。研究チームは、ほとんどの人が視覚的には弱い結び目と強い結び目を見分けられないのだと結論づけました。 「人間は、結び目の強度の予想がとても苦手です」とFirestone氏。 「人類はもう数千年も結び目を使ってきました。それはそんなに複雑ではなく、ただのひもがからまった状態です。それでも、人に結び目の写真を見せてその挙動を判断させると、何もわからないのです。」 ただ、今回の実験参加者は専門家ではなかったので、結び目に関してもっと経験のある人(たとえば水夫や登山家など)ならもっと正しく予想できるのかもしれない、とCroom氏は考えています。それでもCroom氏らは、人間はひもやロープといった柔らかいものに関して、硬いものより直感的に理解しにくいのではと言っています。 「私たちは結び目の内部構造について、ただ見ただけでははっきり理解できないのです」とCroom氏。「我々の環境推論能力に関して、いかに多くの疑問が未解決であるかを示す良いケーススタディです。」 なので、これからもし小さな子に靴ひもの結び方を教える機会があって、なかなか覚えてくれなかったとしても、その子の覚えが悪いってことにはならなそうです。 人間の能力全体的に、見ただけじゃ結び目がどうなってるか、わからないっぽいですから。
福田ミホ