「情弱な被害者ではない」闇バイト応募者の本性 「だまされた普通の人々」は作り上げられた虚像である
しかし、指示役にいくら脅されても、人を殴ったり、死に至らしめたり、金銭を奪ったりすることには、「普通の人」なら、生理的なブレーキが働き歯止めがかかるはずである。人間とはそういうふうにできているのだ。 一方、生理的な歯止めが利かず、法律を破ることや人を傷つけることに抵抗感がない人々が一定数おり、彼らに共通しているのは、「反社会的パーソナリティ」を有していることだ。程度の差こそあれ、事件に加担した人々のほとんどが、こういう問題を抱えた人々なのだと推測できる。
一昔前ならば、このようなパーソナリティを有する若者は、暴走族に入ったり、不良グループに関わっていたりして、犯罪に加担していたケースが多かった。今は犯罪集団というものがほぼ壊滅に近い状態であるため、バーチャルな世界でつながってこうした犯行を重ねているのだ。 ■反社会的パーソナリティとは いつの時代でも、反社会的パーソナリティを有する人々は人口の数パーセントはいるとされている。そうした人々は、仕事が長続きしない、衝動的である、目の前の快楽に飛びつき長期的な結末を考えない、共感性が欠如し人の痛みがわからない、良心の呵責がない、自己中心的であるなどの特徴を共通して備えている。今回の実行犯のパーソナリティにもこれらがぴたりと当てはまる。
実は、犯罪心理学において、犯罪の最も大きなリスクファクターとされるものが、これら反社会的パーソナリティや反社会的態度なのだ。 例えば、実行役の一人は、弁護士に「何年くらいで刑務所を出られますか」と聞いて「一生出られないよ」と聞いて驚愕したと報じられているが、このエピソードはまさに象徴的で、彼の自己中心性や長期的な見通しが持てない愚かさがよく表れている。 「普通の主婦」にしても同様だ。報道によると、彼女は夫から繰り返し闇バイトに応じることを頼まれて断り切れなかったという。夫は振り込め詐欺などにも関わっており、「トクリュウ」とも何らかの関係があったとされている。