「英語民間試験」延期 何が一番問題だったのか? 坂東太郎のよく分かる時事用語
「地域格差」「経済格差」の課題は残ったまま
18年3月、大学入試センターが認定試験で使われる8種類の民間資格を発表しました。それでもなお課題は引きずったままでした。「各実施主体に対し特に今後一層の取組を求めたい事項」(何となくタイトルに焦りを感じます)として、▽会場は全都道府県で複数回実施することを期待している、▽居住する地域にかかわらず、全ての受検希望者が希望する資格・検定試験を過重な負担なく受検できるよう最大限の努力を求める、▽検定料は経済的負担を極力軽減できるよう、経済的に困難な受験生への配慮も含め、可能な限りの努力、配慮を強く求めたい――、と哀願調となっているのが分かります。 今年の9月10日、しびれを切らした全国高等学校長協会が文科相宛てに要望書を提出しました。「地域格差」「経済格差」の課題が解消していない中で、受験生を抱える当事者として焦りを覚えたのです。 「高等学校が一番知りたい各検定試験の実施日や実施場所についての情報は未だ全容が明確になっておりません。加えて、約3分の1の4年制大学の活用状況が未定であるなど、不安の解消に程遠い状況が露呈し、受験生である高校生の不安を助長する結果となりました」と切実に訴え、「これらの混乱の原因の一つは、文部科学省及び大学入試センターが『システムの参加要件に含まれていないことは指導できない』ことを理由に、実施団体への直接の働きかけを行わないこと」を挙げました。
対する文科省は「止めるとかえって混乱する」と実施を主張。そこに臨時国会中の10月24日、萩生田光一文科相がテレビ番組で「(英語民間試験は)自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」といった発言をし、格差を容認するのかという批判が一挙にクローズアップされたのです。萩生田氏は発言を謝罪、撤回しましたが、本質的問題が解決しないまま新テストへ突っ走る気かという批判はやまず、国会で質問されました。 同30日の衆議院文科委員会で、英語民間試験の延期を訴える野党に対し、文科相は「受験生の不安や懸念を解消して、円滑な実施に向けて全力で取り組む」としつつも、「仮に今の状況より混乱が前に進むような事態が確認できれば考えなければいけない」とやや含みのある文言で答弁。11月1日に「来年度(2021年1月)からの導入を見送る」と表明したのです。