医師の「真面目さ」と「サービス残業」によって支えられえきた「高レベルな日本の医療」…4月から始まる「医師の働き方改革」激務の医師たちを救う一手になるか?
◆論文発表は「自己研鑽」…労働時間にカウントされず
ユージ:「医師の働き方改革」で課題と言われているのが「自己研鑽(じこけんさん)」。こちらはどういうことでしょうか? 塚越:残業問題があるなかで、もう1つの大きな課題が自己研鑽です。医者の業界は技術のアップデートなどもあり、論文を読んだり、学会発表したりする「自己研鑽」が必要になります。 ユージ:常に最先端にいないといけませんよね。 塚越:そうです。厚生労働省が2019年7月に通達した文書「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」では、上司の指示や業務と関連があれば「労働」で、それ以外は「自己研鑽」としています。これは業務にカウントされず、曖昧な領域です。 大学の業務も同じで、どこまでが仕事でどこからが自分の研究論文を読む時間なのかが曖昧です。リスナーのみなさんも、いろいろな職種のなかで、どこまでが業務なのかが曖昧なことはあると思います。 ユージ:たとえば(大学教授が)帰宅してから、翌日の講義に使う生徒向けの資料作りなど、作っている時間はお給料になりませんよね? 塚越:そうですね。曖昧なところが、かなり多いと思います。この問題は、例えば病院側がお医者さんに働かせたいと思ったとして、何でも「自己研鑽」として業務にカウントしなければ、残業規制が骨抜きにされかねません。 実際、神戸市東灘区にある「甲南医療センター」では、専門的な研修を受ける専攻医で、当時26歳の高島晨伍(たかしま・しんご)さんが2022年5月に過労自殺した問題もあり、「自己研鑽」のあり方は課題になっています。 この件では西宮労働基準監督署が、タイムカードや電子カルテの履歴から考えて(自殺する前の)1ヵ月の時間外労働はおよそ207時間だったと認定しています(過労死ラインは100時間)。 甲南医療センター側は、専攻医が申請していた残業は30時間であり、監督署は自己研鑽の時間を労働時間にカウントしていると反論しているのですが、調査報告書を遺族に開示しなかったり、ニュース・報道ドキュメンタリー番組「報道特集」(TBSテレビ系)の報道では、事件前にも別の専攻医が病院側に過重労働を訴えていたことも分かっているため、私は病院側に問題があると思います。遺族は病院側を2月に提訴しています。