「脚本?そんなもんないよ」アイアンマン出演俳優が明かす撮影現場が修羅場すぎた!
『アイアンマン』の製作現場では、脚本の準備不足から毎日が即興の連続だった。ジェフ・ブリッジスやロバート・ダウニー・Jrなど俳優陣がどのようにこの混乱を乗り越え、映画を大成功に導いたのか、制作裏の秘話に迫る。本稿は、ジョアンナ・ロビンソン、デイヴ・ゴンザレス、ギャヴィン・エドワーズ『MCU 比類なき映画スタジオの驚異的〔マーベル〕な逆転物語』(フィルムアート社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 撮影現場に脚本がないだと? それでも士気は上がり最高だった 「脚本?そんなもんないよ」とジェフ・ブリッジスは不満そうに言った。 「毎日現場に現れても、どんな台詞を言うのか誰も知らない。脚本家に電話して『どうなってんの?』と聞いたりね。準備したい。台詞を覚えたい。脳内で考え方を微調整した。『ジェフ、落ち着け。2億ドルの学生映画だと思え。楽しめ。気楽にいけ』」 『アイアンマン』の撮影が始まる前に、ジョン・ファヴローとスタッフたちは、ビバリーヒルズにあるメルセデス・ベンツの販売店の2階を占めるマーベル・スタジオの混雑から抜け出して、埃っぽいカリフォルニア州のプラヤビスタにあるハワード・ヒューズの古い撮影所に引っ越した(おかげで東海岸にいるマーベルの役員たちの監視の目からさらに一歩遠ざかれるというおまけもついた)。 「土と埃。他に言い表しようがないのですが、ともかくそんな感じでした」とヘア・デザイナーのニナ・パスコウッツが言う。 「そこに小屋がいくつかあって、家みたいなのがあって、それだけ」
メイク、編集、デザインといった部門がプラヤビスタの撮影所に出入りし始めたとき、作業の指針になるのは物語のアウトラインとコンセプト画だけだった。決定稿はいまだ存在しなかった。 クリエイティヴな作業は山ほどあったが、孤立した環境はパーティー気分を盛り上げた。アート・ディレクターのデイヴ・クラッセンと美術監督のマイケル・リーヴァ〔役職としては美術監督が上〕は、ともにファヴローが2005年に撮った『ザスーラ』に参加した仲だが、その2人が後に語り草になるような“カクテルの時間”を夜な夜な催した。 「マティーニ、ビール、何でもござれ」とスティーヴン・プラットが懐かしむ。「最高でしたよ。士気が上がるから。でしょ?」 ● ヒマをもてあましたジェフが 現場に持ち込んだ豚のゲーム 「そう言えば、ジェフ・ブリッジスが、ポーカーズという小さなプラスチックの豚がついてるゲームを持ってきました」。『アイアンマン』のメイクアップ・アーティストであるジェミー・ケルマンがそう教えてくれた。