「実務で使える」生成AIを提供する米新興Moveworks、年間経常収益は約150億円
ChatGPTが2022年11月に公開されたとき、企業の幹部らは事業をより効率的にするために生成AIシステムをどう活用すればよいのか、その答えを見つけるのに奔走した。続々と行われた派手なデモや発表を経て、企業幹部らは今、一時の熱狂を通り抜け、実際にコストを削減し、投資に対するリターンをもたらすツールを展開することを熱望している。 会話型AIプラットフォームを提供する米企業Moveworks(ムーブワークス)の共同創業者兼CEOのバーヴィン・シャーは、自社がまさにそうした企業を支援していると主張している。MoveworksのAIツールは、IT関係のトラブル対応や有給休暇の申請といった単調なタスクを自動でさばき、従業員が契約書やファイル、職場規定、カレンダーなどの社内文書を素早く検索できるようにする。そうすることで、担当者が基本的な質問への回答に費やす時間を減らし、より重要なプロジェクトに注力できるようになり、企業はかなりの額を節約することができるというのがシャーの言い分だ。 人事やIT関係の平凡な業務を自動化することで、Moveworksは現在最も名の知れた生成AIスタートアップのなかでも稀な規模の収益成長を見込んでいる。同社は24日、現在の月間サブスク数および契約に基づく今後12カ月の年間経常収益(ARR)が1億ドル(約144億円)を超えたと発表した。 巷で話題になっているAI企業の評価額がかなりのものになっている一方で収益は少ないままである中、Moveworksの収益は飛び抜けている。大規模言語モデル(LLM)の構築を行う評価額55億ドル(約8054億円)のCohere(コヒア)のARRは今年7月時点で3500万ドル(約51億円)だとテック系ニュースサイトのザ・インフォメーションは報道。同じくテックメディアのテッククランチによると、企業向けAI検索ツールを提供している評価額7億ドル(約1024億円)のHebbia(ヘビア)の7月時点でのARRは1300万ドル(約19億円)だった。 一方、AI分野でさほど知られていないMoveworksのプラットフォームは、Hearst(ハースト)やGitHub(ギットハブ)、トヨタ自動車、セールスフォースなど350社を超える企業の従業員約500万人に利用されている。従業員はチャットボットに「チームをディナーに連れ出す場合、予算枠はどれくらいか」「有給休暇が十分残っているのであれば、感謝祭の翌週に入れてもらえるか」といった質問をする。Slack(スラック)やTeams(チームズ)にも使われているMoveworksのシステムは、従業員がさまざまなアプリケーションに保存されている情報をかき集めることができるよう、Workday(ワークデイ)、ServiceNow(サービスナウ)、ADP、マイクロソフトなどの外部ツールと接続している。