中国の裏切りで「もうミャンマーは終わりです」 軍政権を支援で国民からは絶望の声
6月頃から雲行きが…
ところが今年の6月ごろから、両国の高官の往来が活発になる。まず、国軍ナンバー2のソーウィンが訪中し、武器の購入が目的だったという噂が流れた。8月に入ると中国の王毅外相がミャンマーでミンアウンラインと会談に臨んでいる。 その目的が明らかになってくるのは8月末だ。中国と少数民族軍との仲介役をはたしてきたのは、ワ区を事実上統治するUWSA(ワ州連合軍)だが、彼らと中国側関係者が雲南省で行った会議の議事録が流出。そこで中国は少数民族軍に圧力をかけようとしていることが判明した。それを受けるかのように、国軍に一斉攻撃をした少数民族軍のひとつMNDAAは、「NUGとの協力否定」を表明した。 この報道を耳にしたとき、ヤンゴンで法律関係の仕事につくMさん(48)はフェイクニュースかと思ったという。 「しかしその後の情報をみると、どうも本当のよう。これはまずいと思いました。ミャンマーの国民は、クーデター以来、国際社会に国軍の弾圧について訴えてきました。しかしどの国も積極的に動いてはくれなかった。そして中国が国軍支援にまわると……」
「この国が嫌です」
日本に暮らすLさん(48)は、少数民族軍が支配する北部出身のシャン族だ。独自の情報ルートがあるらしい。 「問題は民主派政府のNUGにあるよう。NUGは欧米の支援を受けています。少数民族軍がNUGと手を結ぶということは、欧米側に近づくことになる。中国はそれを警戒して圧力をかけたようなんです」 現地の民主派メディアは「中国はミャンマーの軍事政権を中国の傀儡にしようとしている」という論調で、民主派と少数民族軍を分断させようとしていると主張している。中国はかねて「停戦」を呼びかけているものの、その背後にはさまざまな策動が見え隠れする。 10月18日にはマンダレーの中国領事館に手りゅう弾が投げ込まれた。反発する民主派の犯行という見立てだが、ミャンマー国民の間では国軍の自作自演という推測も流れてきた。 これらを経て、11月に国軍トップが訪中したわけである。中国が国軍の支援に動いたことは、多くのミャンマー国民に焦燥感を生んだ。厭世的な言葉を口にする人も少なくない。 ヤンゴンの会社で働く女性のCさん(22)はこういう。 「その話、もう訊かないでください。森のなかで私たちの代わりに戦っている若者を思うと息が詰まってしまって。中国が支援すれば、国軍はもっと強く出る。もうミャンマーは終わりです。この国が嫌です」 男性のMさん(26)は、 「僕は徴兵される可能性がある。田舎の友達の何人かは拉致されるように国軍に連れ去られて兵士にされた。僕らになにができるっていうんです?」 仲買業者のNさん(42)の声には覇気がない。 「私たちはもうなにもできない。猛烈な物価高で、生きていくのがやっとなんです。もう国軍のことを考える余裕もない」