史上最低水準の「航空チケット」価格、なぜ過去最高水準と感じてしまうのか?(海外)
アメリカ人が航空運賃に手ごろさを感じない理由
航空運賃が前よりも下がっているならば、米国民が今なお不満に感じている理由は別のところにあるかもしれない。 「消費者は必ずしもインフレ調整後で航空チケット代を捉えているわけではなく、名目価格の上昇に不満を感じているのかもしれない」とタン教授は言う。「また、パンデミック以降、航空便の遅延がやや増加しているため、旅行体験にいら立ちを募らせている恐れもある」 さらに、パンデミックでチケット価格が急落した後、2022年に航空運賃が急上昇したため米国民が警戒している可能性がある。2022年9月に航空運賃は前年比で約43%と、過去最高の上昇率を記録した。 加えて、飛行コストは航空運賃だけではなく、追加手荷物や座席指定のような追加手数料を払っている旅行者は多い。こうした手数料は予約手続き中に上乗せされることがあり、これをバイデン政権は取り締まろうとしている。昨年7月にYouGovが実施した調査によると、米国民の44%が最初に提示された価格よりも多く航空運賃を支払ったと回答している。今年はユナイテッド航空、アメリカン航空、デルタ航空がそれぞれ受託手荷物手数料を引き上げた。 こうした手数料は一部の顧客には負担になるかもしれないが、インフレ調整後の航空運賃の下落を相殺するほどではない、とキース氏は言う。エアラインズ・フォー・アメリカ(The Airlines for America)の分析では、2023年の国内往復チケットの平均価格は、手荷物や座席変更の手数料を含めて406ドルだった。航空運賃がこれよりも安かったのは2010年以降では2020年と2021年だけであり、その大部分の要因はパンデミック禍での需要減退だった。 さらに言えば、米国経済全体でモノやサービス価格が上昇しているため、消費者が航空運賃への支出を減らすようになっており、それがとりわけ航空チケット代を高く感じさせる理由となっている可能性もある。 旅行アプリ「ホッパー(Hopper)」の主席エコノミストを務めるヘイレイ・バーグ氏は、金融会社ナードウォレット(NerdWallet)に対してこう語っている。「パンデミック中は何が起こるかわからないため、旅行の数週間前になってようやく航空チケットを予約する傾向がみられたが、いまなおその習慣を続けている人がおり、それもチケット代が高くなる理由だ」 ヘイレイ氏はチケット代を抑えるために、少なくとも1カ月前の予約を推奨する。 航空チケットは半ば定期的に発生する最も高額消費の1つであるというアメリカ人もおり、そうした人は特に価格上昇に敏感になりがちだ。また、めったに飛行機に乗らない人は、インフレ調整後の航空運賃が数十年にわたり下落していることにほとんど気がつかないだろう。 また、キース氏は、航空運賃の変動は予想しづらく、それが消費者のいら立ちの元かもしれないと言う。さらにアメリカ人が旅費のようなお金の問題に対して、データと裏腹な否定的な感情を抱くのはよくあることだ。 キース氏は言う。「航空運賃は、定期的な買い物の中で唯一、最もわかりにくく価格が変動しやすい。そうした航空運賃の性質に否定的な見方が重なって、航空チケットが過去最低価格なのに、過去最高水準に感じてしまいがちなのは意外ではない」 ※本記事へ掲載された数値情報に、翻訳を誤った部分が一箇所ありました。公開後、修正を加えております。ご了承ください。
Madison Hoff,Jacob Zinkula