我慢の利いた走りを見せたメイショウタバル

［ＧⅠ菊花賞＝２０２４年１０月２０日（日曜）３歳、京都競馬場・芝外３０００メートル］ 　牡馬クラシック最終戦、第８５回菊花賞の最終追い切りが１６日朝、東西トレセンでスタートした。下馬評ではダービー馬ダノンデサイルが頭一つリードした感があるものの、過去５年で１番人気馬の勝利はわずか一度のみ。今年も乱菊ムードが漂う中、展開のカギを握るのがけれん味のない逃げ脚が魅力のメイショウタバルだ。ダービーでは無念の出走取り消しとなった個性派が、ラスト１冠で一発を狙う。

長丁場を乗り切る心身の成長

　春のクラシックは悔しさだけが残る結果となった。１冠目の皐月賞は４番人気の支持を集めたが、スタートして制御不能になり前半５ハロン５７秒５のハイペースで暴走、離れた最後方で１７着入線となった。その後、ダービーへ向けてクロス鼻革など、馬具を工夫して巻き返しを図ったが、枠順確定後に挫石で出走取り消し…春２冠は完全燃焼することなく終了した。 　逆襲に燃える秋は初戦の神戸新聞杯で前半５ハロン通過が６０秒０のマイペースの逃げ。春から一変してうまく気性面をコントロールできるようになって悠々と逃げ切った。スタミナ勝負の３０００メートル戦を逃げ切るだけのメンタル、フィジカルともにこの秋、完全に身につけた。 　総仕上げとなる最終追い切りは主戦の浜中を背にウッドで単走。１週前に続いて馬場入りにてこずり、５ハロン標識を過ぎたところで少し折り合いを欠いて力む面が見られたものの、それでも何とか鞍上が我慢させてラスト２ハロンは１１・３―１１・３秒と馬なりのまま好時計でゴール。全体時計でも６ハロン８０・９秒と、さすがの脚力を見せた。

オーナー長年の夢

「馬場入りをスムーズにできなくてキャンターへ行く時にテンションが高かった。サラッとの予定だったけど、思った以上に時計が速くなってしまった。３０００メートルになるので無駄な体力を使わずに折り合いが一番。最初の下りからスタンド前までが重要。皐月賞は折り合いを欠いたけど、通用する力はあるのでこの馬の気分を害さないように運びたい」と浜中は京都３０００メートル戦への最大のポイントに挙げた。 　一方の石橋調教師は「予定より時計は速くなったけど、無理したわけではないからね。最初の下りでどこまで我慢が利いているかだけど、いつもゴール板を過ぎたらハミが抜ける馬なので１周目のスタンドでリラックスできるんじゃないかな。控える形になっても結果を出しているし、とにかく自分のリズムで走れるかどうかだけ」とＶへの期待を口にした。 　石橋調教師は騎手時代にメイショウサムソンとのコンビで牡馬３冠が懸かった０６年菊花賞で４着に敗れた苦い思い出がある。今回のタバルに関してもダービーを取り消した直後に「秋は菊花賞へ向かってほしい」と要望があったように松本好雄オーナーにとっても菊花賞制覇は長年の夢。石橋師が騎手時代に達成できなかった牡馬３冠ラストは陣営の気持ちがたっぷり詰まった戦い。そんな思いを背負って２１年タイトルホルダー以来の逃げ切りＶを見せてくれるはずだ。