大きく変わることは決して悪くはない!──新型ミニ・カントリーマン試乗記
小さなレンジローバー
穏やかな気持ちでドライビングを楽しめる、この上品なドライブフィールは、やはりなにかに似ている……。記憶の糸を辿ると、ピンときた。このクルマは、「レンジローバー」に似ているのだ。ミニ・カントリーマンは大きなミニであるのと同時に、小さなレンジローバーであるようにも思える。 英国自動車ブランドの合従連衡の歴史を振り返ると、ミニとレンジローバー(ランドローバー)はひとつ屋根の下で暮らしていた時期がある。 第2次世界大戦後、外国資本から自国メーカーを守るためにオースティンとモーリスが大同団結、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が結成される。ここから、オースティン・セブン、後のクラシック・ミニが生まれた。そして1967年にはローバーがレイランド・グループ傘下に入り、さらに1968年にはBMCとレイランドが合併して、BLMCとなる。ここでクラシックミニとランドローバーが同門となった。 その後、あれやこれやがあってBLMCはローバー・グループとなり、1994年に今度はBMWがローバー・グープを傘下に収めた。そして2000年にローバー・グループは解体、ミニ・ブランドはBMWに残り、ランドローバーはフォードに売却された後、紆余曲折を経てジャガーとともにインドのタタ傘下となった。 離れ離れになり、それぞれが家庭を持つようになってからずいぶん経ったわけで、最新のミニ・カントリーマンにレンジローバーの匂いを感じるのは、ロマンチックな妄想だろう。でも、最新のレンジローバーはBMWのV8エンジンを積んでいるわけで、たまには一緒にご飯とかに行っているのではないか。 というわけで、新しいミニ・カントリーマンは体験とインテリアで差別化を図るという自動車ビジネスの未来と、英国車の歴史と伝統を感じさせてくれた。非常に興味深い存在だ。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)