イニエスタの言葉で変わった神戸のMF古橋亨梧が森保Jにサプライズ初招集!
大学4年生に進級する直前の2016年春に参加した、湘南ベルマーレの沖縄キャンプを古橋はこう振り返ったことがある。いくつかのクラブの練習へ参加して懸命にアピールしてきたなかで、FC岐阜からのオファーをようやく勝ち取ったのは、卒業が迫ってきた2016年の年末だった。 しかも、その年のJ2で20位に終わっていた岐阜で、運命に導かれた出会いが待っていた。新監督に就任したのは「接近・展開・連続」を合言葉に、独自のポゼッションサッカーを掲げる大木武氏。第二次岡田ジャパンをコーチとして支えた戦術家のスタイルと、古橋は鮮やかに合致した。 ポゼッションと群を抜く縦へのスピードとは、一見すると噛み合わない要素のように映る。しかし、前出の酒井の言葉を聞けば大木体制下の岐阜で、そしてボールポゼッションを高める「バルセロナ化」を標榜してきたヴィッセルで、古橋がすぐに溶け込むことができた理由がわかる。 「ボールを回していくなかで、相手の最終ラインの裏を狙うチョイスは絶対に必要になってくる。ポゼッションだけになってしまうと、同じようなスタイルのチームと戦うときにどうしても苦しくなる。だからこそ、一発で裏を狙える選手の存在は有効なバリエーションになる」 2017シーズンはルーキーながらリーグ戦全42試合で先発。6ゴールをあげた古橋は、2年目の昨シーズンを迎えると7月末までに11ゴールを量産。スペインの至宝にして稀代の司令塔、アンドレス・イニエスタが直前にデビューを果たしていた、ヴィッセルからのオファーを手繰り寄せた。 いまも感謝の思いを捧げることを忘れない岐阜のチームメイトたちから、イニエスタの存在をさして「うらやましい」と声をかけられ、背中を押されたステップアップ。緊張と興奮が交錯する新天地での日々で、テレビの向こう側でしか見たことがなかったスーパースターから突然声をかけられた。 「もっと君のよさを出していいよ」 紅白戦の最中にイニエスタからかけられた言葉が、古橋に勇気を与えた。直後の昨年8月11日に行われたジュビロ磐田戦。開始15分に来日初ゴールとなる先制弾を決めたイニエスタに続いて、後半11分にJ1初ゴールを、武器とする裏への飛び出しから決めたのが古橋だった。 「僕のよさはスピードとドリブル、そして相手ゴール前へ飛び出していくことだし、実際に前へ走るとものすごいパスが出てくる。自分のよさはこれだと再認識したことで、ポジティブな姿勢と気持ちで試合に臨むことができた。いままでテレビで見てきた選手と一緒にプレーすることは、誰もが望んでいること。そのチャンスを得られたいまは、いいところをどんどん吸収して今後につなげていきたい。一緒にプレーすることで、サッカーというスポーツの楽しさをあらためて実感できました」