映画「チア☆ダン」 広瀬すずを“福井弁女子”に変えた方言指導の空気感
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福井市の県立高校チアリーダー部が全米チアダンス選手権で優勝 ── 。そんな実話をもとにつくられた公開中の映画「チア☆ダン」が話題になっています。チアダンスのほかに注目されているのは主役の広瀬すずさんたちが使う独特のイントネーションが耳に残る“福井弁”。演じ手をどのように福井の高校生たちに変えていったのか。方言指導を担当した北川裕子さん(31)にその舞台裏を聞きました。
台本を方言に直し、配役ごとに音声を吹き込み
北川さんは福井県坂井市出身。舞台を中心に活動している女優です。「もともと少ないのか、福井県出身というプロフィールが目に留まったようです」(北川さん)。「チア☆ダン」の広瀬さんや真剣佑さんが出演した映画「ちはやふる」(2016年)でオファーがあり、真剣さんらの福井弁を教えることになったのが、方言指導にかかわるきっかけになりました。 しかし舞台が福井の「チア☆ダン」は、「ちはやふる」と異なり、作品全編にわたり、ほとんどの出演者が福井弁を話さなくてはいけません。「まずは標準語で出来上がった台本を福井弁に直すところから始まりました」(北川さん)。 映画を鑑賞するだれもがわかるよう「方言でコテコテにしてほしくない」という製作サイドの要望もあり、監督や脚本家、プロデューサーと相談しながらの台本直し作業におよそ1カ月。その後、配役ごとに方言でセリフを読み上げて録音しました。「台本ほとんどを読んだ感じ」と北川さんは振り返ります。 初めに吹き込んだ音声は演技の邪魔になるかと考え、淡々と読み上げたものでしたが、監督から「感情やテンポを入れたものに」と希望があり、1人ひとりの役に合わせて、演じ分けて吹き込み直しました。撮影では、いつでも俳優が確認できるよう、アメリカロケ以外すべて立ち会いました。 セリフの急きょ変更や追加には、すぐ場面に応じた方言に直すことも求められました。「対応力、判断力が求められましたし、福井弁の『引き出し』を増やさなきゃと思いました。たくさん勉強になりました」。その笑顔からは、当時の充実感が伝わってきます。