映画「チア☆ダン」 広瀬すずを“福井弁女子”に変えた方言指導の空気感
福井独特のなまり 苦労する出演者に寄り添う
子どものときに見たドラマ「家なき子」の安達祐美さんの演技にあこがれて女優を志し、地元福井の高校卒業後に上京。「なまりは苦労しました」と苦笑します。福井は、東日本・西日本のアクセントがぶつかる緩衝地帯のため、言葉のアクセントが平板という特徴を持っています。 「例えば食べる『飴』と降る『雨』や、『橋』と『箸』。福井はアクセントがなく、どっちも同じなんです。最近も、回数を数える『1回』と、フロアーの『1階』のアクセントがどうだったっけ、と混乱しちゃいました」。 だから「チア☆ダン」出演者が、「真剣に福井弁を追求して、素敵に話す姿に感動しました」と明かします。特に、文節のたびに語尾を揺らしながら伸ばすイントネーションのつけ方や、怒って話すところでも、抑揚を入れず、棒読みのように一本調子で話す福井の方言ならではのニュアンス表現に苦心していたそう。 「『十分これで伝わるよ』とか、『難しければ、最後の語尾だけでも大丈夫』とか、アドバイスしながら、でも最後は任せて、そばにいるのが私の役目かな、と思いながら務めました」と言います。 撮影以外でも、出演者が相づちの「ほやほや」や、語尾で使う「~かし」を気に入って使っていたのも「うれしかった」(北川さん)。休憩中も福井弁や福井の話題を提供し、コミュニケーションをとるよう心がけました。 「言葉だけでなく、福井の人の人柄や空気感を知ってもらえたら」と考えたためです。「それぞれの気持ちや状況に、どの福井弁が適当か考えるとき、役者をやっていることが役立ったなら本当にうれしいです」。
「福井を代表して教える責任感を感じていた」
福井弁習得に努力する出演者の様子には、同業者としても学ぶところがありました。北川さんが「耳がとてもいい」と、評価する真剣さん。「ちはやふる」では、仲良くなった地元の人と一日遊んで方言をマスターした、と明かします。「上手に福井弁で話しかけてきてくれたときには、本当にびっくりしました」。 「チア☆ダン」の現場でも、常に北川さんにチェックを求め、確認しながら演技するストイックな役作りに刺激を受けました。 「福井を代表して教える責任感を感じていた」(北川さん)。映画公開後、地元の知人たちから「よかったね」という連絡を受けて、本当に安堵したといいます。スクリーンに映った「絶対アメリカ行ってやるでの!」と広瀬さんが叫ぶシーンには思わず胸が熱くなったとも。 ほかに映画のノベライズやコミック本でも、すべて福井弁“翻訳”を担当することになり、「いろんなつながりがあって、携わることができ、幸せでした。ご縁のある作品だったんだと思います」と声を弾ませます。 「福井弁について、より考えて、より誇りに思うように。好きになりました」。これからも方言指導の機会があれば「ぜひやりたい」。目を輝かせて抱負を話しました。