<負けヒロインが多すぎる!>北村翔太郎監督インタビュー “影”で表現したこと 絶妙なリアリティーラインを目指す
「ちょっと懐かしいと感じる景色、色……など見た人の夏の記憶につながるようにしようとしました。舞台の豊橋市をロケハンする中で、きっとこの場所は誰かが青春を過ごした場所なんだろうな……と考えていました。自分は豊橋にゆかりはないのですが、ちょっと懐かしいと感じたんです。僕も地方出身なので、場所は違っても、共感できるところがあり、それをアニメとして伝えられたら、より説得力が増すと考えました」
背景がリアルではあるが、キャラクターとマッチしていて、違和感がない。
「リアリティーラインをどこに持っていくのかが難しいところでした。コメディータッチの作品ですが、コメディーに寄せすぎると、肝心のドラマが軽くなってしまう。ドラマに寄せすぎると、コメディーが浮いてしまう。バランスが難しいんです。そこで、リアルな背景のタッチに合わせたキャラクターのデザイン、色にしようと決めました。背景はリアルタッチで、少し懐かしく、少し華やかにする。キャラクターは、アニメならではのデフォルメ感があります。リアルな背景の中で、キャラクターが立つように、色や線の処理を何度もテストしながら、今の形になっています」
ポップでコミカルな作品にしては、影が多いのも特徴だ。キャラクターの影の付け方にもこだわった。影の付け方を何パターンも用意し、シーンによって使い分けた。
「とても大変なので通常のアニメではまずやらないことですが、キャラクターの影付けの設定を何パターンも用意して、絵コンテの段階で影付けのパターンを指定して、シーンに合わせて明るくしたり、暗くしたりしています。暗いシーンだからといって、ただ暗くしてしまうと、キャラクターが見えにくくなる。キャラクターの線量、デフォルメのバランスによって、暗くできる範囲が変わってきます。リアル寄りな画のキャラクターのアニメはもっと暗くできますが、ポップなデザインになればなるほど、暗くできない。原作イラストの印象を変えない程度に、リアリティーラインを上げ、コントロールしています。また、レンズも強く意識しています。カメラのレンズと人間の目では見え方が違います。写実に寄せるわけではないのですが、写実をベースに人間の目に近い見え方を目指しています」