ルックスの影響力は永遠ではない…サイエンスジャーナリスト・鈴木祐が指摘する長期的に好感度を左右する本当の要因
近年、自分の印象をより良く見せる色が分かる「パーソナルカラー」診断などが流行しているが、顔などの外見と実際の印象はどう結びついているのか。 【画像】ルックスの影響力はどれくらいの期間で下がっていくのか… 「日本一の文献オタク」と呼ばれるサイエンスジャーナリスト・鈴木祐氏の著書『最強のコミュ力のつくりかた』から一部抜粋・再編集して紹介する。
ルックスが良い人の言葉は信用が高い
コミュニケーションについて抱きやすい勘違いのひとつが「ルックスの重視」です。 コミュニケーションをうまく取るためには、顔の作りやファッションなどの外見的な要素にこだわり、自分の魅力を高めねばならない。そんな思い込みのことです。 そう言われて、すぐ納得する人は少ないかもしれません。 見た目がよい人物が周囲から好かれやすいのは間違いなく、そのおかげで話を聞いてもらえる確率も上がるでしょう。 それならば、見た目の改善にリソースを投じるのは当然のように思えます。 ルックスの効能を示したデータも多く、ある研究では、美男美女の教師に習った学生は、そうでない教師についた学生よりも、「授業の内容に説得力があった」と答える確率が高く、実際にテストの成績も良い傾向がありました。 その他の研究でも、私たちの多くは、外見の良い人物が発したメッセージほど信じやすい現象が報告されており、コミュニケーションにルックスの良さが役立つのは疑いようがありません。
ルックスの影響力は下がっていく
しかし、実はルックスが持つ影響力は、世の中で思われるよりも長くは続きません。 たいていの場合、皆が認めるような容姿を持った人物ほど時間とともに人気が下がり、一方で普通のルックスを持つ人の魅力度は上がっていくのが一般的なのです。 一例として、テキサス大学などの実験では、129人の学生にインタビューを行い、同級生に感じる魅力のレベルが1年をかけてどう変化するのかを調査しました。結果は次のとおりです。 ・学期の始まりには、ほとんどの学生が、ルックスやファッションの優れた同級生を魅力的だと評価した。 ・3カ月後には見た目の影響は薄れ、ルックスが悪い学生も「魅力がある」と評価されるようになった。 ルックスが絶大な影響を持ったのは最初だけで、時間をかけてお互いを知るにつれて、魅力的な人物の対象が変わったわけです。 約350人の男女を対象にした別の調査でも結論は同じで、「ルックスが良い人に魅力を感じる」と答えた者は全体の2~3%に過ぎませんでした。 多くの人は、思いやり、道徳性、公平な性格などを「魅力の要素」として挙げており、ルックスを重要視するほうが少数派でした。この研究を手がけた心理学者のポール・イーストウィックは、こう指摘します。 「よく言われるように、時間をかけて相手を知るだけで、その人はより魅力的になる。そこで影響を持つのは見た目ではなく、各人の『ユニークな個性』こそが、長期にわたって魅力を定義する」 ルックスが私たちの魅力を高めるのは、せいぜいが初対面から1カ月まで。それ以降は「個性」の影響が強くなり始め、長い目で見ればほぼ無関係なレベルに落ち着きます。