“アリエル”になった男性会社員のその後は? 会社にもメイク&可愛いファッションで出社「男性のまま可愛くなるということに、偏見がなくなれば」
■一歩踏み出す勇気をくれたのは、今までの“経験”と“ディズニー”
――そんな自分を解放できたのは、20歳のときだったそうですね。 「いろいろな経験の蓄積だったと思います。そのひとつには留学がありました。大学時代にフィリピンとアメリカに長期滞在したのですが、その時に様々な人たちの文化や考え方に触れて、『周りに合わせるのではなく、自分らしくしていいんだ』と思うようになったんです。ただ頭ではわかっても、20年近く人目を気にして自分を隠してきた僕の心はそう簡単には変わりませんでした」 ――自分を少しずつ許せるようになる後押しをしてくれたのが、ディズニーだったとか。 「ディズニーパークって自分を思い切り出せる場所。人目を気にして生きてきた僕にとって、可愛いファッションにチャレンジできる場所でした。そんな僕に、キャストさんたちはとても温かい声をかけてくれました。また、もともとSNSにディズニーにまつわるネタを投稿していたんですけど、たまにディズニーコーデを載せていたら、応援してくれる人がすごく増えて。その声が本当に嬉しくて、勇気と指針につながって、少しずつ自己表現できるようになった気がします」 ――可愛くなりたいならメイクだけでもいいのかなと思うのですが、洋服まで女性ものを着るのはなぜですか? 「女の子たちが可愛くなりたいと思うときに、両方を気にするのと同じです。僕の中ではメイクとファッションは同列です。自分を解放できるようになったとき、どちらが先ということはなく、両方が同じくらいのハードルでした。例えば最初からスカート履くのは勇気がいるので、ちょっとスカートっぽく見えるパンツから入って、同時にメイクも薄めのナチュラルメイクから始めてという感じでした」 ――変わり始めたにこさんを見て、周りの反応はいかがでしたか? 「とにかく20歳まではまったく気づかれないようにしていたので、みんなビックリですよね。一方で、無反応も多かったです。理解を示してくれたのは、限られた人のみでした。その全員が女の子で、もともと理解がありそうな仲の良かった子たちでした」 ――人目は気にならなかったですか? 「最初の頃は、めっちゃ気にしていました。とにかく目立たないように、女の子に溶け込みたくて、マスクは外せないし、声を高めにしていたときもありました。あと身長が高くて、ちょっと浮いてしまうので、縮こまってたりもしていました」 ――そんな時代を経て、今があるんですね。現在は、ファッションモデルにも挑戦されているようですが、今後の夢や目標を教えてください。 「今年のディズニー・ハロウィンでは、プリンスとプリンセスの両方をやってみようかなと考えています。両方のいいところ取りをしちゃうのも、僕にしか届けられないメッセージかなと思うし、そこを着眼点に興味を持ってくださる方もいらっしゃるかなと思うので。あと、僕の思いを若い子たちに届けるために、TikTokも頑張ろうかなと考えています。動画は苦手ですけど、若いうちの価値観の形成ってすごく大事だと自分自身の経験から強く思っています。人は違っていて当たり前で、そのうえでどう自分らしく生きるか、どう思いやりを持って生きていくべきか、そういう意識を若い子たちに広めていきたいです。そして僕自身は、自分の思う『可愛い』をいっぱい追求して試して楽しみたいと思っています」 (文:河上いつ子)