「6・3・3制」見直しは見送りへ 学制改革が議論される背景は
6・3・3・4制の在り方を検討していた政府の教育再生実行会議が7月中にもまとめる第5次提言で、学制全体の改革が見送られる公算となりました。一方、下村博文文部科学相(兼教育再生担当相)は3日、実行会議からの提言を受けて、小・中学校9年間の教育を一つの学校種で行う「義務教育学校」(仮称)の制度化を検討する考えを明らかにしました。今後、幼児教育の無償化など教育費の負担軽減策がどれだけ盛り込めるかも焦点になります。
国民的な理解には「まだまだ議論が必要」
学制をめぐっては、自民党の「教育再生実行本部」(遠藤利明本部長)が2013年5月、「平成の学制大改革」と称して6・3・3制の弾力化と4・4・4制や5・4・3制など新たな学校区分への移行、義務教育の早期化と幼児教育の無償化、専門高校等を活用した5年一貫職業教育などを提言。これを受けた政府「実行会議」が同年10月以来、(1)これからの教育の在り方、特に義務教育や無償教育にかかる論点、(2)学校段階の区切りにかかる論点、(3)高等教育、職業教育にかかる論点、(4)学制改革に応じた教師の在り方)かかる論点、(5)学制改革に必要な条件整備にかかる論点――について検討を続けています。 学制改革の見送りは、5月に開催された学校関係者の会合で文部科学省の担当者が明かしました。この担当者は「これまでの(実行会議の議論の)中身を拝見していると」と前置きした上で、学制改革には「国民的な理解が必要であり、いろいろな試みを考えていく余地はあるが、全体を大きく一定の方向に動かすことにはまだまだ議論が必要ではないか、と会議で共有されている」と解説しました。この「いろいろな試み」の一つが義務教育学校というわけです。
6・3・3制が今の子どもたちに合ってない?
学制改革の必要性が指摘されるようになった大きな要因には、戦後に導入された6・3・3制の区切りが今の子どもたちに合っていないのではないかという実感があります。それが「戦後レジーム(体制)からの脱却」を目指す安倍晋三首相の意向にも合致したようです。 実行会議では、ヒアリングで有識者から子どもの発達が昔に比べて2歳ほど早まっていることが報告され、委員からも、学校段階が上がる際に問題が多発する「小1プロブレム」「中1ギャップ」を解消するためにも学制を見直すべきだという意見が出されていました。 焦点の一つは、義務教育年齢の引き下げでした。しかし会合に提出された資料によると、5歳児の幼児教育(保育も含む)を無償化するだけで約2610億円の追加公費が必要になるといいます。小・中や中・高の区切りを全国的に変えるにも、学校施設の整備や教員の異動などに多大なコストが掛かるのは必至です。第5次提言では将来の検討課題にとどめ、当面は無償化を目指す模様です。 ただ、そうした困難さは当初から予想されていたことでもありました。論点の一つに教育費をはじめとした「条件整備」を掲げているのも、国の財政が厳しい中で教育費の増額につなげたいという下村文科相の強い意向が反映したものとみられます。