日本製鉄と「ふたつの大国」――中国抜きのグローバル成長戦略というフロンティア
(C)Pavel Kapysh/shutterstock.com
日本製鉄にとって米国と中国は半世紀以上にわたって最も重要な海外市場であり、同社のグローバル化の主な舞台となってきた。その「ふたつの大国」で、日鉄は歴史的な転換を図ろうとしている。米国におけるUSスチール買収計画であり、中国ではかつて新日本製鐵時代に全面協力して誕生させた宝山鋼鉄との“縁切り”である。 USスチール買収は 米国大統領選 の影響もあって政治問題化し膠着状態が続いているが、今年12月までの決着を目指す。宝山については、2004年に宝山と設立した自動車向け冷延及び溶融亜鉛めっき鋼板製造の合弁会社、宝鋼日鉄自動車鋼板(BNA)の持ち株を宝山に売却することが7月に発表された。これにより日鉄の中国における鋼材生産能力は、その7割が削減される。 1970年代に米国市場での事業拡大を日米貿易摩擦によって封じられた新日鐵は中国に向かい、宝山への協力で中国進出の橋頭堡を築いた。今、中国が一国で世界の鉄鋼生産の過半を握る異常な状況の中で、日鉄の振り子は再び中国から米国に振れた。日鉄が描く「中国抜きのグローバル成長戦略」は自動車、電子・電機など日本の様々な業界を先導するものとなるだろう。
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後藤康浩