【11月22日は「いい夫婦の日」】結婚や事実婚は“2人”だけの選択でいい?今考えたい社会と私と私たちのこと
“2人のカタチ”は2人だけのものだけど、2人だけでは完結しないのかもしれない。パートナーとの関係は、“2人らしい”ものを“2人だけで”好きなように選べばいいのでしょうか。そうしたくても、“2人”は、会社で、地域で、子育てで、趣味で、遊びで、社会と繋がっています。 祝・結婚!『1122 いいふうふ』主演・高畑充希×岡田将生【写真】 ジェンダーやセクシュアリティについて発信を行うSNSメディア『パレットーク』編集長である合田文さんをゲストにお呼びして、パートナーとの「しっくりくるカタチ」が異なる3名と座談会。“2人のカタチ”のと社会との関係について考えます。 <座談会参加者> Aさん:31歳女性。男性のパートナーと同棲中。結婚予定は今のところはなし。 Bさん:33歳女性。男性のパートナーと事実婚を選択し、結婚式も控えている。 Cさん:37歳女性。男性のパートナーと1年前に法律婚。家事は基本的に7:3で夫の担当。
■“パートナーと私”はよくも悪くも社会と繋がっている Aさん:パートナーと自分が心地いいあり方を探る中で、「私たちらしいカタチであればよい」とはいえ、やっぱり社会との関係は切っても切れないと思うんです。私の彼氏は「俺らが幸せならまわりからどう見られてもいいじゃん!」というタイプなんですけど、私はそこまで割り切れなくて…。 合田さん:なかなか割り切れることではないですよね。「どう見られてしまうんだろう」「もしかしたら、誰かによくないことを言われるかもしれない」という恐怖は、軽く見ることはできません。 Aさん:生きていくうえでは、“パートナーと自分”だけじゃなく、“社会と自分”という視点も当然あるじゃないですか。でも、彼は「なんで俺たちの世界を見ないの?」「俺たちらしくいられればいいじゃん」みたいなテンションで来るので、少しつらいんですよね。 合田さん:家の中という、安心して過ごせるのが理想的な場所で、性別役割などをあまり気にせずつき合える心地いい関係であるのは素敵なことだと思いました。でも“2人”の外である社会に出たときに、Aさんが“女性”という立ち位置でどう振る舞うのか、何を求められてしまうのか。そういうところへの配慮がないのはしんどいですよね。 Cさん:私は逆に夫から指摘されたことがあります。「“妻にもっと家事をやってほしい”とか、同期に愚痴ったりしないの?」と聞いたんです。そうしたら「僕の職場の男性は“女性が家事をするものだ”と考えている人が多いから、相談しても“なんで女性が家事をしないの?”みたいな答えが返ってくるだけだから余計ストレスが溜まるんだよ」と。夫が“男性”として男性社会にいることへの配慮が不足していたなと思いました。 合田さん:公平につき合っているつもりでも、性別や立場が違うと視点やつらさが違うかもしれない、というところは大事ですよね。パートナーを個人として大切にしなければいけない局面と、バックグラウンドや属性と社会での立ち位置を踏まえたうえで配慮すべき局面。この両方をとらえるのは難しいのですが、かなり重要だと感じます。 ■居心地のいい“2人のカタチ”は2人だけでは作れない Bさん:“夫婦別姓”を調べていたとき、近いワードとして同性婚が俎上に上げられていることが多かったんですよ。当時、私はそれを見て「私は異性愛者で名字をどちらかに統一すれば法律婚ができるのに、わがままなんじゃないか」と悩んだんです。そもそも結婚の選択肢を取ることができない人もいるのに、それを自分から放棄して「私はこうしたい!」というのはとても贅沢でわがままなことなんじゃないかと。 Cさん:私も「自分がやりたいことがたまたますべて“法律婚”に収まっていたから、あまり悩まずに世間の“常識”みたいなものにスーッと乗っかっちゃった」という罪悪感みたいなものがあります。 Aさん:その気持ち、わかります。もし彼と結婚するとしても、相手がいるからそのまま入籍、みたいな流れにしたくないです。自覚的にちゃんと心のプロセスを踏みたい。パートナーにはこの気持ちを理解してもらいたい。 合田さん:前回も少し話しましたが、“2人のカタチ”を選ぶことって、結局のところ教育や政治、社会の雰囲気が関わってくるんですよね。個人の在り方の選択に罪悪感を感じさせてしまうのも、婚姻の平等をはじめ選択肢が狭められている現状や、それを安心して選択し、まわりに伝えることができる社会の雰囲気作りがまだまだ必要だからですよね。 Bさん:今はもう罪悪感は消化できているんですけどね。いろんな在り方があることで、社会は前に進んでいくんだろうし。 合田さん:画一的な価値観に基づかない選択肢を取るBさんのような方のパートナーシップをSNSで知って、多様なあり方がすでにこんなにあったということに、ようやく気づいた人も多いはず。実際に今、事実婚の方たちはその役割を負わされてしまっているところはありますよね。まだまだロールモデルを見せなきゃいけない段階だから。 Cさん:私はまだ罪悪感を消化できていないです。“法律婚”というすでにあった楽なレールにスーッと乗ってしまったことで、自分は特権を持っている立場として何もできなかったのではないか、と感じてしまうこともあります。 合田さん:たとえばその特権性を持っているとしても、「この立場からできることは何だろう」と考えることはとても有意義だと思いますよ。変化とは、いろいろな立場の人が、その人のいる場所を変えていくことで、広がっていくものであるはずです。当事者でないと何もアクションできない、なんてことはないと思いますよ。 Bさん:私は、別のシチュエーションでマイノリティになったことがあるとアクションを起こしやすいのかな、と思っています。学生時代、イギリスに留学したときに、アジア人の女性で言葉もあまり喋れない…という状況で、マイノリティな存在だったんです。なんでマジョリティはわかってくれないんだとか、マイノリティで苦しいとか、そのときのつらさを覚えているから、別の場所でマイノリティである人の気持ちを想像しやすい気がしますね。 ……もはや“2人”の話ではなくなってきちゃいましたね(笑)。 Aさん:でも、こういう話をしていると、どんどん「人としてのあり方」や「社会のあり方」のほうに焦点が当たってきちゃいますよね。 Bさん:そして、結局私たちが、どんな人でも居心地のいい“2人のカタチ”を選べる世の中をつくっていかなければいけないんだな、という課題意識も出てきました。 Cさん:「個人でやるには限界があるから、先に国がなんとかしてくれよ!」とも思いますけど。先に法律を整えてくれたら、変化の勢いは格段に速くなるはずなのに。特に婚姻の平等や夫婦別姓については、まず法律を変えることで、社会を変える大きなきっかけを国がつくってほしい…。 合田さん:そうですね。パートナーとのあり方がテーマでしたけど、“恋愛”や“2人”だけに注目しているだけでは結論は出ない、ということですよね。 結局は自己理解の話でもあり、ジェンダーの話でもあり、社会とのつながりの話でもある。社会の在り方や法律、教育が変わらないと選べない“2人のカタチ”もある。 多様な人たちが、それぞれの居心地のよい“2人のカタチ”をつくるには、2人だけの力では難しい、ということだと思います。しかし、社会を作っているのは私たち個人ですよね。個人が変わることが、ゆくゆくは社会を変えることだと思って、こういう話をまわりの方としてみてほしいなと思いました! 『パレットーク』編集長 合田文 株式会社TIEWAの設立者として「ジェンダー平等の実現」などの社会課題をテーマとした事業を行う。広告制作からワークショップまで、クリエイティブの力で社会課題と企業課題の交差点になるようなコンサルティングを行う傍ら、ジェンダーやダイバーシティについてマンガでわかるメディア「パレットーク」編集長をつとめる グラフィックレコーディング/あこ 取材・文/東美希 企画・構成/木村美希(yoi)