【玉田圭司×名良橋晃|元日本代表が語り合う高校サッカー】昌平のインハイ優勝につながった“プライドの一戦”。魂の喝は「こういうサッカーに負けるのが一番嫌いだ」(前編)
「お前らこのまま負けていいのか? 本気でサッカーできていない。本気でやれ!」
名良橋 本大会初戦のあとは、2回戦で帝京安積に4-0、3回戦で福大若葉に2-0と順調に勝ち進み、迎えた準々決勝の桐光学園戦は前半で0-2。正直、前半は攻撃の形を作れていなかった印象でしたが、監督としてはどう見ていましたか? 玉田 選手たちのプレーが悪かったというよりも、セットプレーで先制点を取られ、2失点目のPKもアクシデントが影響して0-2となっただけに、不運で選手たちが焦った部分があったかなと思いますね。 名良橋 それでもハーフタイムで2枚替え、山口豪太選手と長璃喜選手を投入した後半は同点に追いつき、最終的にはPK戦で勝利。采配の狙いを教えてください。 玉田 狙いとしては、前半に相手がどう出てくるか様子を見てから、ふたりをどう起用するか判断する考えで、前半の20分くらいにふたりには「後半開始から出るから準備して」と言っていました。相手が自陣に下がり、中から攻めて崩しにいくシーンが多かったので、ふたりには「起点になってほしい」と伝えて後半から送り出しました。 名良橋 相手は5バックで引いていましたからね。 玉田 そうですね。5バックで守備を固めるのもサッカーのひとつなので否定するわけではないですが、あくまで個人的なサッカー観として「こういうサッカーに負けるのが俺は一番嫌いだ」とも選手には言いました。 名良橋 ハハハ(笑)。それはハーフタイムに? 玉田 はい、「お前らこのまま負けていいのか? 本気でサッカーできていない。本気でやれ!」とも選手に言いました。 名良橋 その喝でギアが上がり、勝利できたわけですね。 玉田 準々決勝の勝利で正直、優勝が見えましたね。今これ言うのは結果論ですけど(笑)。 名良橋 PK戦で接戦をモノにして、優勝できる雰囲気が出てきたような? 玉田 そういうことですね。 名良橋 そして準決勝では帝京長岡に2-1、決勝では神村学園に3-2で勝って優勝。現役時代には2010年に名古屋グランパスでJ1制覇も経験されていますが、指導者としての優勝と、選手としてのタイトル獲得、どっちが嬉しかったですか? 玉田 もちろん、どちらも嬉しくて、違う喜びにはなるんですけど、指導者としていろいろ勉強しながら監督を任されていると考えると、今のほうが嬉しいと感じてしまいますね。まあ、Jリーグ優勝したのは10年以上も前ですし、あんま覚えていない(笑)。 名良橋 怒られますよ、ピクシー(ストイコビッチ監督)に(笑)。 玉田 冗談でも怒られますね(笑)。 名良橋 大丈夫ですか? 優勝後に胴上げで落とされた腰は(笑)。 玉田 首が痛いんですよ(笑)。 名良橋 まだ残っているんですか? 玉田 ちょっと残っていますね。 名良橋 むち打ちみたいな? 玉田 なったかもしれないですね。マジで痛かったですよ(笑)。 <中編に続く> 構成●志水麗鑑(フリーライター) PROFILE 玉田圭司(たまだ・けいじ)/80年4月11日生まれ、千葉県出身。高校時代は習志野高でプレーし、プロ入り後は柏や名古屋などで活躍した元日本代表FW。2006年のドイツ・ワールドカップではブラジル戦でゴールを決めた。2021年に現役を引退し、2023年から昌平でコーチを務め、2024年からは監督に就任。同年8月にはチームをインターハイ優勝に導いた。 名良橋晃(ならはし・あきら)/71年11月26日生まれ、千葉県出身。高校時代は千葉英和高でプレーし、プロ入り後は平塚(現湘南)や鹿島などで活躍した元日本代表の右SB。98年にはフランス・ワールドカップに出場した。現在はJSPORTSで放送されている『Foot!』で、高校年代の大会や選手を紹介する木曜日のコメンテーターを務めている。