俳優・安藤政信が有名写真家たちとのグループ写真展に出展中。「彼はなぜ、写真を撮り続けるのか?」
安藤 数年前に若い頃からお世話になっているカメラマンの丸谷嘉長さんから連絡をいただいたんです。それで「今度、『Negative Pop』という『誰もが簡単に画像を残せる時代にプロのカメラマンが本気で撮った写真はどこまで人々の心に伝わるのか』『スポンサーの縛りがなく、モデルもクリエイターも感性のまま自由に表現した作品は他の写真と何が違うのか』をコンセプトにした写真展をやるけれど、どう?」って誘われたんです。 20代の頃の自分だったら「はい、やります!」と即答してたと思いますが、20年以上この世界で仕事をしていると、やはり慎重になるじゃないですか(笑)。別に疑っていたわけではないけれど、何か裏があるかもしれないって考えちゃうじゃないですか。それで、少し様子を見ていたんです。その後、今年3月に東京・赤坂で行なわれたNegative Popのグループ写真展『置き去りの記憶』を見に行ったら、すげぇ、良かったんですよ。感動しました。 ――何が良かったんですか? 安藤 別に大きなバジェット(予算)があるわけでもないのに、カメラマンさん、モデルさん、スタイリストさん、ヘア&メイクさんなどのクリエイターがちゃんと集まって、自分たちの意志で発信しようとしていたんです。それで、その場ですぐ丸谷さんに「写真展、見ました。すごいです。俺もこういうことがやりたいです」ってメールしました。すると「次は京都でグループ展をやるんだよ」って返信があって、「もし、よかったら次は俺も参加させてください」ってお願いしました。 ――安藤さんから見てNegative Popの活動は、どういうふうに映っているんですか? 安藤 今の若いコたちは、自分たちで勝手に集まってどんどん好きなことを発信しているじゃないですか。でも、自分たちから上くらいの世代って、何か世間体を気にしているのか、考えすぎているのか。仕事と関係なく、自分たちだけで何かをやるということはあまりないと思うんです。だから、「今の若いコたちは自由でいいな」「うらやましいな」と感じていたんですけど、それをNegative Popに参加しているクリエイターさんたちはやっているんですよね。「いくつになってもやりたいことをやっている」という気がしたんです。 ――Negative Popに参加しているクリエイターの中には、50代、60代の人もいますもんね。 安藤 そうなんです。だから、この業界の事情をわかりきった人たちが、本当に自由に好き勝手にやっている。それが、すごいと思います。だから、今回、ご一緒させていただいて、本当に勉強になったし、素直に「写真、楽しいな」と思ったんです。だから、生意気かもしれませんが丸谷さんに「これ、絶対に続けてください。絶対に写真の新しい歴史になりますから」って言っちゃったんです。それくらいすごい写真展なんです。 ――参加している他のカメラマンの写真を見て、どう思いますか。 安藤 写真展のオープニングイベントに出た後、ひとりで京都の街をぶらぶらして、なじみのある店で刺身を食べて日本酒を飲んで、夜中の1時くらいにホテルに帰ってきたんです。それで、この時間ならゆっくり写真が見れるかなと思って、皆さんの写真をじっくり見たんですが、あらためて「すげえ写真だな」と思いました。 自分もこれまで写真を撮ってきたし、芸能界での経験もあるので「この写真は、どれくらいの時間とお金がかかっているのか」ということが一応、わかるんです。例えば、動物園のクジャクが羽を広げている写真があるんですが、クジャクの真正面から羽を広げる瞬間を撮るというのは奇跡的なことですよ。どれくらいの時間をかけたのか想像がつきません。「これ、どうやって撮ったんだろう」という写真ばかりなんですよ。とにかく熱量がすごい。"やべえ写真"ばかりです。 まあ、そりゃそうですよね。皆さん、本当に超一流の写真家で、ずっとこの業界でやってきた人たちが、何のしがらみもなく好き勝手に写真を撮っている。すごくないわけがないですよ。だから、自分もそこに一緒になって付いていきたいと思っています。 ●安藤政信 Masanobu Ando 俳優、写真家。1975年5月19日生まれ。神奈川県出身。 1996年公開の映画『キッズ・リターン』(監督・北野武)でデビュー。2024年は、映画『陰陽師0』、『シティーハンター』(Netflix)、『かくしごと』などに出演。 *Negative Popグループ展「Behind Memories時の記憶」は、京都「node hotel」(京都市中京区四条西洞院上ル蟷螂山町461)1Fギャラリーにて、8月31日(土)まで開催中(10時~20時/入場無料)。 取材・文/村上隆保